『イキマネ』とは、女性が「イキイキ」「活きる」マネジメントのこと。
組織の中で女性本来の良さが発揮できるマネジメントを目指すこの手法について、ハピレボプロデューサーであり、株式会社オフィスat 専務取締役の阿部博美氏による連載記事を配信します。
(※)このコラムでは、イクボスを推進するプロジェクトメンバーによる寄稿記事を配信しています(記事一覧)。
今回のコラムでは、管理職に抜擢されるも体調不良で休職、その後に職場復帰した女性の実例を取り上げ、組織における課題や上司の立場からどのように向き合えばよいかを解説します。
概要
- Mさん:38歳、女性 家族:夫と中学2年の息子
- 地方銀行勤務。30代で管理職にチャレンジしたが、体調を崩して休職してしまった。10月に職場復帰したが今後どのように働いていくか迷いがある。
Mさんの悩み
大学卒業後に事務で採用され、5年後に総合職になり支店で課長補佐的な仕事していた。その後企画セクション(男女差のない職場)に異動となり、バリバリ仕事をしていた。上司に恵まれ昨年4月に管理職になった。
30代での抜擢人事はアドバルーン的で、最年少での副支店長となった。多分女性活躍推進が絡んでいるんだと思う。戸惑いもあったがチャンスだと思って引き受けたのだが、今では甘かったと思っている。
昇格と同時に部署異動、部下も一気に27名になった。4月は銀行の忙しい時であるのに加え、運が悪いことに金融庁の検査が入った。検査官とのやり取りはすべて管理職が対応しなくてはいけないので、もの凄いプレッシャーだった。総合職であれば、管理職になるまでにある程度経験を積んだのだろうが、自分は全く未経験だった。
しかも、その後システムの大幅な入れ替えが控えているということで、かなりの長時間労働が続き、ついには体力の限界で体を壊した。不眠、めまいの症状で約1年弱休職することになってしまった。
復職した今は、元の企画セクションに戻してもらい、残業禁止の配慮の中で補佐的な仕事をしている。休んでいる間にすっかり考え方が変わってしまい、以前のようにバリバリ働ける気がしない。
加えて、実は息子が不登校気味でそれも悩んでいる。家庭のことを職場に持ち込みにくいし上司には相談し辛い。ここまで頑張ってきたのに、という気持ちと、もうこれ以上頑張れない、という気持ちでどうしていいか分からなくなった。
問題は色々と絡み合っているので、すぐに答えは出ないでしょう。
けれども、いくつか課題は見えてきます。
ひとつは女性活躍推進に関すること、もうひとつは家庭との両立に関すること。
女性活躍推進については、とりあえず数字を作ることも必要です。女性の管理職者を増やすという人事は、遅々として進まない女性活躍に弾みをつける意味でも大切です。
その時気をつけたいのが、複数人同時に昇格させることです。
🔗【イキマネコラムvol.17】やっと初の女性管理職を誕生させたのに続かなかった理由
今回は、この女性が一人だけだったかは分かりませんが、どちらにしても悩みを相談できる伴走相手がいなかったことは問題でしょう。ただでさえ女性の昇格は目立ちますから、本人がつぶれてしまわないような配慮は必要だったのではと思われます。甘やかすわけではなく、つぶれてしまっては企業としても損失です。
また、家庭との両立も大変だということを上司は把握しておく必要があります。家庭でゆっくり神経を休ませることができて初めて、会社でもいい仕事ができるのです。相談しやすい雰囲気を作るとか、時々声をかけて確認するなど、本人のパフォーマンスを最大化することが上司の役割ではないでしょうか。ただし、これは決して女性だけに限った話ではありません。夫婦で同じように子育てしたい若い人は増えていますから、男性社員にも同じことが言えます。
そして最後にもうひとつ。
🔗【イキマネコラムvol.8】女性の相談事は解決策を求めていない
すぐに解決策を提示する必要はありません。相談にのって話を聞いてあげることが、彼女の頭の整理にもなります。聞くだけは苦しいかも知れませんが、そうすることで、本人が自ら解決策を探し当てるはずですから、それまで待ちの姿勢を取ることが双方にとって大切です。
ちなみにパートナーの場合も同じですよ。
👉今回のPOINT
1.人事異動は「トークン」にならない配慮を
2.プライベートの安心があってこそ仕事のパフォーマンスも上がる
3.相談事は「傾聴」と「受容」を心掛ける
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このコラムでは、組織の中で起きがちなミスコミュニケーションを軸に、様々なポイントやコツをお伝えします。ぜひ違いを知って、新しい視点を楽しんでみてください。
そして、女性たちが存分に能力を発揮でき頼もしい戦力となることで、力強い組織となるためのサポートとなればと思います。
<阿部博美・プロフィール>
株式会社オフィスat 専務取締役/ハピレボプロデューサー。産業カウンセラー、キャリアコンサルタント。
自称「女ゴコロ翻訳家」。男女の本能からくる意識や行動の違いを、様々な具体的場面に落とし込み、お互いの理解を深め相乗効果を上げることを目指す。企業活動の中では、女性客の本音を翻訳しマーケティング設計に繋げ、組織の中では、お互いの強みを活かし合える風土づくりに繋げている。
現在、女性目線を専門とするマーケティング会社を経営。商品やサービスについてはもちろん、近年は採用ブランディングや女性活躍推進の相談を多く受けている。それらの中で、女性社員や外部の主婦など、女性チームをマネジメントする場も多い。新卒から15年間携わった人材派遣業界での女性マネジメントや、派遣先企業と派遣スタッフとの間での翻訳経験が非常に役立っている。