『イキマネ』とは、女性が「イキイキ」「活きる」マネジメントのこと。
組織の中で女性本来の良さが発揮できるマネジメントを目指すこの手法について、ハピレボプロデューサーであり、株式会社オフィスat 専務取締役の阿部博美氏による連載記事を配信します。
(※)このコラムでは、イクボスを推進するプロジェクトメンバーによる寄稿記事を配信しています(記事一覧)。
今回のコラムでは、家庭と仕事を両立させつつも、突如会社から管理職を打診され葛藤する女性の実例を取り上げ、組織における課題や上司の立場からどのように向き合えばよいかを解説します。
概要
- Nさん:41歳、女性 家族:夫と小学生の子ども2人
- 流通業勤務。育児と仕事の両立の中で、一旦キャリアより育児を優先させ、気持ちを切り替えてきた。それが突然、女性活躍推進の数値目標達成のために管理職を打診された。調子が良すぎるし振り回されたくないという思いと同時に少し迷いもある。
Nさんの悩み
大学卒業後、流通業の今の会社に入社。男女関係なく思いっきり生き生きと働きたいと思っていたし、できれば管理職にも挑戦したいと思っていた。だからこそ今の会社を選んだ。
ところが、31歳で第1子を出産して育休から職場復帰してからは、責任のある仕事やチームをまとめるリーダー的な役割が回ってこなくなり、モチベーションが低下していった。両立は大変だろうからと勝手に決めつけられて、補助的な仕事しか任されなくなり、悔しかったし働く意欲もなくなってしまった。
それならと気持ちを切り替えて、割り切ることにした。無理せず家庭と仕事を両立させながら、一歩一歩前進しているつもりだった。
それが突然、来期から管理職にならないかと上司から打診があった。女性活躍推進の数値目標を達成させるために、人事が色々候補者を探しているという噂。
そんなことに振り回されたくないという思いもある反面、自分でない誰かがそのポジションに就くことは少し悔しい。ただ、自分の経験不足への不安や長時間労働への不安がある。
一度振られた元カレに、よりを戻したいと告白されているかのようです。せっかく違う道を歩もうと決意したのに、もう一度やり直そうと言われて決心がゆらいでいます。それに、すぐに受け入れるのはちょっと悔しいといったところでしょうか。
さて、この場合の課題は2つあります。ひとつはヤル気満々だった気持ちを削がれてしまったことに対する会社への不満と、管理職になるためのスキル不足に不安を感じていることです。
今回の問題はそう難しくないと思います。コミュケーションをしっかり取り、話し合いをすることですぐに解決するはずです。
まずひとつめの課題は、すでに過去のことですから、話を聞いてあげることで事足ります。とにかく話をきちんと聞くこと、そして彼女の気持ちに寄り添い「共感」してあげることです。マミートラックにかけてしまったことは、素直に謝罪してください。その事実は変えられませんが、その時の気持ちに共感してあげれば納得してくれるはずです。
次に、管理職打診の課題です。彼女の迷いは自分のスキル不足。「数合わせに翻弄されるのか」と口では言っていますが、スキル不足に対する不安が払しょくできれば、チャレンジしたいと思っているはずです。
ですから、スキルアップできるような対策を提供することと、併せて「見守っているからチャレンジしてみろ」という言葉をかけてあげることです。そして大事なことは、彼女自身の口で「管理職をやってみます」と言わせることです。言葉に対する責任感が生まれモチベーションにも繋がります。イルカ型上司は、部下にしっかり寄り添い自分で答えを見つける手助けをするだけです。
最後に大事なポイントをお伝えします。女性は心にひっかかることがあると、なかなか先に進めません。全部がクリアにならないと次に行けないのです。今回の場合はひとつめの課題で、過去の悔しかった気持ちを会社に受け止めてもらい、その時のイヤな感情を納めることで、初めて次の問題に移れるのです。
👉今回のPOINT
1.話をしっかり聞いて気持ちに寄り添い「共感」することが大事
2.イルカ型上司は、自ら答えを出すサポートをするだけ
3.女性は心に何かひっかかると次へ進めない
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このコラムでは、組織の中で起きがちなミスコミュニケーションを軸に、様々なポイントやコツをお伝えします。ぜひ違いを知って、新しい視点を楽しんでみてください。
そして、女性たちが存分に能力を発揮でき頼もしい戦力となることで、力強い組織となるためのサポートとなればと思います。
<阿部博美・プロフィール>
株式会社オフィスat 専務取締役/ハピレボプロデューサー。産業カウンセラー、キャリアコンサルタント。
自称「女ゴコロ翻訳家」。男女の本能からくる意識や行動の違いを、様々な具体的場面に落とし込み、お互いの理解を深め相乗効果を上げることを目指す。企業活動の中では、女性客の本音を翻訳しマーケティング設計に繋げ、組織の中では、お互いの強みを活かし合える風土づくりに繋げている。
現在、女性目線を専門とするマーケティング会社を経営。商品やサービスについてはもちろん、近年は採用ブランディングや女性活躍推進の相談を多く受けている。それらの中で、女性社員や外部の主婦など、女性チームをマネジメントする場も多い。新卒から15年間携わった人材派遣業界での女性マネジメントや、派遣先企業と派遣スタッフとの間での翻訳経験が非常に役立っている。