[結果発表] 第二回イクボス充実度アンケート調査

【イキマネコラムvol.57】60年でたった1人だった男性育休取得者が、2ヵ月で23人になった理由

[公開日] [最終更新日]2022/01/14

『イキマネ』とは、女性が「イキイキ」「活きる」マネジメントのこと。
組織の中で女性本来の良さが発揮できるマネジメントを目指すこの手法について、ハピレボプロデューサーであり、株式会社オフィスat 専務取締役の阿部博美氏による連載記事を配信します。
(※)このコラムでは、イクボスを推進するプロジェクトメンバーによる寄稿記事を配信しています(記事一覧)。

 




以前、組織で女性が活躍するためには男性の働き方改革が不可欠である、という話をしました。

🔗参照【イキマネコラムvol.55】女性活躍推進は男性の働き方改革とセット

そこで今回は「男性の育児休業取得」についてお話しします。

2022年4月から、いよいよ男性育休の義務化に向かった法律が動き出しますが、ボスの皆さんは心の準備大丈夫でしょうか?

先日、ある企業のダイバーシティ推進担当者と話をしている中で、「創業60年の製造業企業、これまでの歴史の中で男性育休取得は1人しかいなかったけど、ある制度を作ったら一気に取得率100%になった」という話を聞いて非常に驚きました。具体的には後ほどお伝えしますが、結局は皆さん「これまで取りたかったのに取れなかった」ということだったんですね。

こちらのグラフを見ると、育休を「取りたくない、取りたいと思わない」人はわずか6%しかいません。わからないを除くと78.1%の独身男性が「将来育休を取りたい」と答えています。


けれども現実としては取らなかった人からこんな声が聞こえています。


「取得しづらい雰囲気」や「キャリアに影響がありそう」などは、たとえ制度というハードが整備されていても、風土というソフト面が整わないと取得できないということです。最も多い「人手不足」という理由も、引いては「迷惑をかけられない」というソフト面に繋がっています。

前出の企業は、これらの不満を一掃する制度を整備しました。具体的には、育休のために使える有給休暇を20日間新たに設けたということでした。政策としてはシンプルにこれだけなのですが、この影響力は絶大でした。

  • 制度を整備したということで、「会社として休めと言っている」という大きなメッセージとなり、遠慮なく休めるようになった
  • 全社に向けてアナウンスしたことで、全員が「対象者は休むもの」という前提に立つようになった
  • 通常の有休に加えてさらに20日間追加できることで、収入を減らさず休むことができるようになった
  • 制度や手続きについての理解が深まった
話を聞いた時点では、この制度を開始してまだ2ケ月だったのですが、すでに100%の23人が育休取得を申請したというのですから驚きます。「待ってました」と言わんばかりですね。

「そんなに休めるのは大企業だからだろう」という声も聞こえてきそうです。有休や人材の原資については今は脇に置いておいて、この男性育休のメリットは非常に大きいものがあります。
  • 情報共有や効率的な仕事のやり方など、生産性が上がった
  • 子育て女性に対する意識が変わり、職場の雰囲気がよくなった
  • 休み中に会社以外の世界と繋がりができ、復帰後の仕事にも活かせている
  • 休ませてもらった分、恩を返すつもりで頑張りたい
などが取得者からよく聞く意見です。このメリットを享受するためには、多少の不便さも受け入れる必要があるのではと思います。もちろん、デメリットを極力抑える工夫も必要ですが。

前出の企業の取り組みはまだ始まったばかりです。23人のその後についても、引き続き取材を続けたいと思います。

 

👉今回のPOINT

1.将来子どもがほしい男性の78.1%は「育休を取りたい」
2.育休を取らなかった理由は制度より風土
3.男性の育休取得推進は、女性活躍にも有効

 

 

このコラムでは、組織の中で起きがちなミスコミュニケーションを軸に、様々なポイントやコツをお伝えします。ぜひ違いを知って、新しい視点を楽しんでみてください。

そして、女性たちが存分に能力を発揮でき頼もしい戦力となることで、力強い組織となるためのサポートとなればと思います。

 




<阿部博美・プロフィール>

阿部博美
株式会社オフィスat 専務取締役/ハピレボプロデューサー。産業カウンセラー、キャリアコンサルタント。

自称「女ゴコロ翻訳家」。男女の本能からくる意識や行動の違いを、様々な具体的場面に落とし込み、お互いの理解を深め相乗効果を上げることを目指す。企業活動の中では、女性客の本音を翻訳しマーケティング設計に繋げ、組織の中では、お互いの強みを活かし合える風土づくりに繋げている。
現在、女性目線を専門とするマーケティング会社を経営。商品やサービスについてはもちろん、近年は採用ブランディングや女性活躍推進の相談を多く受けている。それらの中で、女性社員や外部の主婦など、女性チームをマネジメントする場も多い。新卒から15年間携わった人材派遣業界での女性マネジメントや、派遣先企業と派遣スタッフとの間での翻訳経験が非常に役立っている。