[結果発表] 第二回イクボス充実度アンケート調査

【イキマネコラムvol.50】「女性活躍推進」の意義について改めて考える

[公開日] [最終更新日]2021/09/09

『イキマネ』とは、女性が「イキイキ」「活きる」マネジメントのこと。
組織の中で女性本来の良さが発揮できるマネジメントを目指すこの手法について、ハピレボプロデューサーであり、株式会社オフィスat 専務取締役の阿部博美氏による連載記事を配信します。
(※)このコラムでは、イクボスを推進するプロジェクトメンバーによる寄稿記事を配信しています(記事一覧)。

 




このコラムも、いつの間にか50回を迎えることとなりました。そこで今回は原点に立ち戻り、「女性活躍推進」の意義を改めて考えてみることにします。

女性活躍推進法が施行されたのが2016年。それからあちこちで「女性を活躍させろ」という声が聞こえ始め、仕方なく「やらねばならない」と動いている企業も多いように思います。誤解している方も多いのですが、女性活躍推進は女性のためだけの福祉策ではありません。重要な経営戦略なのです。そこには大きく3つの理由があります。

1.経営課題の解決、2.社員の幸福度アップ、3.新たな市場の創造

それぞれについて、少し詳しくご説明しましょう。

1.経営課題の解決

いわずもがなの人手不足。日本人の年齢構成は逆三角形になり、若い働き手はどんどん減っています。地方に行けば行くほどこの傾向は顕著で、「女性は苦手だから」などと言っている場合ではありません。
「まだうちは大丈夫」という企業も、そのうち女性も奪い合いになるとしたら、今のうちに体制を整えておく必要は大いにあります。

それまでフルタイム社員しか採用しておらずパート採用に抵抗があった企業に、「フルタイムで働けるけど日本語の喋れない外国人と、短時間しか働けないけど日本語の喋れる女性とどっちがいいか」という話をしたところ、パート採用に切り替えたという事例もあります。
また、新卒採用に苦労していた地方の土木建設業の企業は、女性採用を全面的に打ち出したところ、蓋を開けてみると女性だけでなく男性の採用も上手く行ったという事例もあります。

こちらのグラフをご覧ください。

就活性の意識調査グラフ
彼らは、流行の「テレワーク」や「副業」などよりもずっと、「育児や介護との両立」を重視していることがわかります。

もうひとつ、こちらのグラフをご覧ください。

株価のグラフ
投資家たちが投資先を考える際に、女性が活躍している企業かどうかをチェックしているということが分かるグラフです。その理由は「将来性が見込めるから」です。女性が活躍している(特に女性役員がいる)=業績アップが見込まれる、という判断です。
「うちは上場していないから」という話ではありません。投資家に限らず就活生にしても、消費者にしても、あらゆる外部から企業が評価される際、「女性活躍」は外せないキーポイントとなっているのです。

2.社員の幸福度アップ

上でお見せした就活生のグラフの1位は「残業時間の上限規制」です。2位も併せると、いかにプライベートを大切にしたいのかが分かります。もう「24時間闘えますか」は通用しません。
これが女性活躍とどう関連するのかと言うと、逆に考えてみてください。これらが充実していなかったから、これまで女性が活躍できずにいたのです。

子育ての間、少し時間の融通を効かせてあげたり、残業をなくすことで時短社員も気兼ねなく帰ることができることが、ひいてはプライベートを大事にしたい若い人も、実は親の介護で困っていた50代も、病弱なのに我慢を強いられていた人も、みんなが働きやすいことに通じるのです。
女性活躍という名の下の働き方改革は、実は全社員に通じ幸福度をアップさせるものなのです。

3.新たな市場の創造

女性の視点という新しい発想を取り入れることで、新しい市場を創り出すことができた事例を2つご紹介します。

女性視点の図
ひとつめはワークマン。職人用に開発された機能性の高い服が女性にも売れ出したというのです。例えば「滑らない靴」は、飲食店の厨房で水や油で滑らないようにと作られた靴なのですが、これがママたちの間で「雨の日に滑らなくていい」と評判になったのです。脱ぎ着もしやすくしかもなんといっても安い。同じ商品でも、女性から見ると全く別のものになったといういい事例です。

もうひとつはカルビーの「フルグラ(フルーツグラノーラ)」。忙しい朝食にピッタリな商品です。2021年3月には、グラノーラ市場で最も売れた商品としてギネスブックに載ったというのですからすごいです。ところがこの商品、30年前から同じ名前で売られていたことをご存知でしょうか。
2012年に女性部長が就任してから、一気に売り上げ30億円から300億円と10倍になりました。それは売り方を変えたからです。ターゲットを「若い人」から「働く女性」に切り替え、同じ商品でも別の視点で訴求したのです。部長が女性、しかも子育てママだったことは大変大きいと思います。それまでの20年超、男性たち同士頭を突き合わせていても、全く出てこなかった発想なのでしょう。

ここでもまた、女性視点だから女性向けの商品、ということではありません。力が弱い女性の視点が入ると、シニアや障がい者や子どもにも優しいものになるのです。
私も、男性ばかりで開発したんだろうなというものによく出会います。例えば、パンプスで非常に歩きにくい石畳の歩道、蓋が固すぎてなかなか開かないペットボトルなど。
シートベルトの強度テストでは、これまで男性ダミーでの実験しかなく、2019年にボルボが初めて女性ダミーを使ったそうです。実はシートベルトによる骨折等の重傷者の数は、女性が男性の1.5倍なのだそうで、いかに女性がマイノリティの立場に置かれているかがよく分かる事例です。

 

いかがでしょうか。女性が活躍するということは、ひいては多様性を受け入れるということです。女性はマイノリティの最大のマジョリティですので、女性を対象に据えることで、その後ろにいる様々なマイノリティを受け入れる準備ができるのだと思います。
女性活躍推進こそがダイバーシティへの入り口です。そしてそれこそが、誰もが自分らしく生きられる社会に繋がるのです。

 

👉今回のPOINT

1. 女性活躍推進は女性の福祉のためではなく経営戦略である
2. 女性はマイノリティの中の最大のマジョリティでダイバーシティの入り口
3. 向かう先は誰もが自分らしく生きられる社会

 

 

このコラムでは、組織の中で起きがちなミスコミュニケーションを軸に、様々なポイントやコツをお伝えします。ぜひ違いを知って、新しい視点を楽しんでみてください。

そして、女性たちが存分に能力を発揮でき頼もしい戦力となることで、力強い組織となるためのサポートとなればと思います。

 




<阿部博美・プロフィール>

阿部博美
株式会社オフィスat 専務取締役/ハピレボプロデューサー。産業カウンセラー、キャリアコンサルタント。

自称「女ゴコロ翻訳家」。男女の本能からくる意識や行動の違いを、様々な具体的場面に落とし込み、お互いの理解を深め相乗効果を上げることを目指す。企業活動の中では、女性客の本音を翻訳しマーケティング設計に繋げ、組織の中では、お互いの強みを活かし合える風土づくりに繋げている。
現在、女性目線を専門とするマーケティング会社を経営。商品やサービスについてはもちろん、近年は採用ブランディングや女性活躍推進の相談を多く受けている。それらの中で、女性社員や外部の主婦など、女性チームをマネジメントする場も多い。新卒から15年間携わった人材派遣業界での女性マネジメントや、派遣先企業と派遣スタッフとの間での翻訳経験が非常に役立っている。