[結果発表] 第二回イクボス充実度アンケート調査

【レポート】求められるのはダイバーシティが価値を生み出す組織へのシフト。イクボス企業同盟設立5周年フォーラムを開催しました

[公開日] [最終更新日]2020/01/06

【レポート】求められるのはダイバーシティが価値を生み出す組織へのシフト。イクボス企業同盟設立5周年フォーラムを開催しました
イクボス企業同盟設立5周年を記念し、「ダイバーシティ推進とボスの未来」 ~社会変革の実現に向けて~と題し、フォーラムを開催。200名を超える来場者、また、100名以上がオンラインで参加する5周年にふさわしいイベントとなりました(🔗公式ページはこちら)。

このフォーラムは、NPO法人GEWEL小嶋美代子代表と同稲葉哲治理事の軽快な司会で進められました。

(左:NPO法人GEWEL 理事 稲葉 哲治氏 /  右:同代表理事 小嶋 美代子氏)

まずは、NPO法人GEWEL代表小嶋美代子氏とFJ安藤代表理事のオープニングトークでスタート。「イクボス」という言葉が生まれる前からイクボス企業同盟の構想があったこと、また、5年間で220社を超える企業が加盟する同盟になったその背景を振り返りました。

【レポート】求められるのはダイバーシティが価値を生み出す組織へのシフト。イクボス企業同盟設立5周年フォーラムを開催しました(左:NPO法人ファザーリング・ジャパン代表 安藤 哲也氏 /  右:小嶋 美代子氏)

その後、5つのテーマについて多彩なゲストによるディスカッションが行われ、会場は終始熱気に包まれました。

Session 1 男性育休推進は企業に何をもたらすのか ~令和時代を勝ち抜く企業戦略とは?~

冒頭、FJ塚越理事がFJさんきゅーパパプロジェクトを紹介。FJが実施したアンケート調査から、「育休を取得しなかった男性は、上司が育休取得を促し取得できる環境を整えてくれることを望んでいることがわかった。」と指摘しました。

【レポート】求められるのはダイバーシティが価値を生み出す組織へのシフト。イクボス企業同盟設立5周年フォーラムを開催しました(NPO法人ファザーリング・ジャパン理事 塚越 学氏)

その後、積水ハウス株式会社ダイバーシティ推進部課長 森本泰弘氏より、有給で1ヶ月の育休を取得できる「イクメン休業」、続いて株式会社三菱UFJ銀行取締役常務執行役員 池田雅一氏より、有給の育休と有給休暇をあわせて約1ヶ月の育休が取得できる「Ten Plus Ten」の紹介がありました。

森本氏より、「まずは社員がわが家を世界一幸せな場所にする。そうすれば、お客様にも幸せを提供できると考えて取り組んでいる。」

【レポート】求められるのはダイバーシティが価値を生み出す組織へのシフト。イクボス企業同盟設立5周年フォーラムを開催しました(積水ハウス株式会社 ダイバーシティ推進部 課長 森本 泰弘氏)

また池田氏からは、自身の育児と仕事の両立の経験を踏まえて「予測不能な子育てを経験したことが会社でのマネジメントにも役立っている。それを男性社員にも経験してほしい。」とコメントがありました。

【レポート】求められるのはダイバーシティが価値を生み出す組織へのシフト。イクボス企業同盟設立5周年フォーラムを開催しました(株式会社三菱 UFJ 銀行 取締役常務執行役員 CHRO 池田 雅一氏)

最後にFJ林田理事が、「それぞれの企業の取り組みが、夫婦のキャリアプランやライフプランの共有の機会になっている。柔軟な人事制度と掛け合わせることでライフをOn the Life Trainingと捉え、クリエイティブのキャリアを創造する機会とすることができる。」と締めくくりました。

(NPO法人ファザーリング・ジャパン理事 林田 香織氏)


Session 2 その転勤制度、古くない?!~ 「単身赴任」という英語は無い~

少子化ジャーナリスト 白河桃子氏のモデレーションにより、これからの転勤制度のあり方について考えました。

( 少子化ジャーナリスト 白河 桃子氏)

まず、FJ理事川島から、イクボス10か条で、「家族を伴う転勤や単身赴任など、部下のライフに大きく影響を及ぼす人事に対する配慮」を促していることを紹介。

(NPO法人ファザーリング・ジャパン理事  川島 高之氏)

その後、AIG損害保険株式会社執行役員 福冨一成氏から、転居を伴う転勤制度を廃止し社員の希望するエリア内のみで異動できるWork @ Home Baseの取り組みについて、続いて、サイボウズ株式会社執行役員 中根弓佳氏より、会社からの強制ではなく、社員それぞれの希望に応じて働く場所や働く方を選べる仕組み、また、希望とのマッチングがうまくいかない場合は会社側が「諦める」という社員の意思を最大限に尊重した取り組みについて説明がありました。

(AIG 損害保険株式会社 執行役員 人事部門担当 福冨 一成氏)

(サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長 中根 弓佳氏)

その後のディスカッションでは、FJ川島理事からの「会社のニーズに個人が合わせるのではなく、個人のニーズに会社が合わせるという発想に転換する時なのではないか。」という投げかけに対し、福富氏からは、「個人の状況を優先しないと人事制度自体が成立しなくなってきている。社員のwillを尊重するような制度が必要な時代になっている。」

また、中根氏から、「個人のライフスタイルにあわせた人事の仕組みは採用競争力に直結する。若い世代の中には経験を重視して敢えて異動したいと手をあげる若者もいる。個々が希望する働き方を実現することが個々の主体的なキャリア形成につながる。」と述べました。また、白河氏は、「ライフステージに応じて個人の中にも多様性が生まれる。転勤は強制ではなく、その多様性を強化する機会として活用する時代になっている。」とコメント。


最後にFJ川島理事が「役員や管理職は若い世代にチャレンジしてほしいと思っている。ならば、まずは自分たちから転勤制度を辞めるというチャレンジをするべきだ。」と締めくくりました。

Session 3 『人生100年時代』のワークライフ・デザイン ~企業と個人の新しい「関係」を考える~

ライフシフト・ジャパン株式会社代表取締役CEO 大野誠一氏のモデレーションで「人生100年時代の個人と企業の関係」を考えました。

(ライフシフト・ジャパン株式会社 代表取締役CEO 大野 誠一氏)

まず、「ALLIANCE ―人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用―」監訳者 篠田真貴子氏より著書の紹介をかねて、個人と企業がAlliance(同盟)のような関係を結ぶために、

1)終身雇用は無理、本音から入る
2)社外の人脈を社内に取り入れる
3)会社を辞めた人とも関係を継続していく

という三つの提案がありました。

(「ALLIANCE ―人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用― 」監訳者 篠田 真貴子氏)

続いて、カゴメ株式会社常務執行役員 有沢正人氏が、「主役を会社から個人に置き換えた経営へと変えた。個人のマーケットバリューが上がれば会社の価値が上がる。個人のキャリアを会社が決める時代は終わった。」と述べました。

(カゴメ株式会社 常務執行役員CHO 有沢 正人氏)

さらに、法政大学 キャリアデザイン学部教授 田中研之輔氏が「プロティアンキャリア」について説明。「プロティアンの語源は変幻自在。キャリアを移動することで個人の中に資産が溜っていく。組織にキャリアを預けないで自分でキャリアをデザインしてする必要がある。」と述べました。

(法政大学 キャリアデザイン学部 教授 田中 研之輔氏)

大野氏からの「ボスが意識するべきことは何か」という問いかけに対し、篠田氏からは、「ボスはメンバーのキャリア開発のサポート役。メンバーの会社外の活動をサポートすることで会社としてのチーム力が上がることをしっかりと認識してほしい。」

また、有沢氏より「働き方改革ではなく、生き方改革。個人がハッピーになるための職場環境を構築してすることが生き方の改革につながることを意識することが大事。」


さらに、田中氏より「今の若い世代は一つの会社で一生働くということは神話であると理解している。ビジネスはライフの中の一領域でしかないということを認識して、上司もファミリーやライフをしっかりとマネジメントすることで、自己成長が組織成長にもつながる イクボスの姿を見せていってほしい。」というメッセージがありました。

Session4 ダイバーシティ推進とボスの未来 ~組織変革を阻むもの何か~

BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長/AERA元編集長 浜田敬子氏をモデレーターに迎え、未来のイクボス像とそのイクボスによる組織変革について考えました。

(BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長/AERA元編集長 浜田 敬子氏)

まず、ノバルティスファーマ株式会社 代表取締役社長 綱場一成氏が、 上司と部下という上下関係ではなく、双方が協力しあって組織を運営する「アンボス」という考え方を紹介。また、「家庭内のplanningとoperation を考えた時に、大変なplanningの役を担っていたのは、いつも妻であったと気づくことができた。」と自身の育休の経験も共有しました。

( ノバルティス ファーマ株式会社 代表取締役社長 綱場 一成氏)

続いて、東京大学大学院 バリアフリー教育開発研究センター准教授 星加良司氏が、ダイバーシティの変遷について説明。「ダイバーシティで価値を生み出す組織からダイバーシティが価値を生み出す組織へシフトする必要がある。」と述べました。

( 東京大学大学院教育学研究科附属バリアフリー教育開発研究センター 准教授 星加 良司氏)

浜田氏からの「会社のカルチャーを変えるためにどうしたら良いか」投げかけに対して、星加氏は「マジョリティーは自分が特権を持っているということに気づいていない。まずは気づくことが大事。内発的な動機付けによって揺さぶらないといけない。」また、綱場氏は、「まずは、リーダーが変革を始めることが重要。制度を整えた上で、例えばトップが育休を取得する。育休取得も強制しなくても、次第に取るようになる。」と指摘しました。

さらに、FJ安藤代表理事が「ボス自身がスイッチを自分で押すことが大事。僕らはスイッチを用意するだけ。押すかどうかは自分次第。」とコメント。星加氏は、「短期間で成果を求めるとマッチョなリーダーシップが温存してしまう。少し時間軸を長くする必要があるということ、サスティナブルな視点を取り入れることでアンボスのようなリーダーシップが受け入られる。」


また、綱場氏は「できないことを探すのではなく、できることを探す。革新的な人材を提供するためには革新的な環境からは生まれない。まずは環境から変えること。一人一人ができることをやることが大事である。」と述べました。

クロージングトーク


FJ川島理事と安藤代表理事のクロージングトークでは、PTAに参画した時に自分が無力であることに気づいたという経験談をもとに、

「ライフでの活動を通して内発的な気づきを得ることができるし、会社でも弱みを見せることができる。自分がどう変わりたいのか、どうハッピーになりたいのかを考える機会を得ることができるのがライフ。人生100年時代を楽しく生きるためには、定年後ではなく、今からどう楽しく人生を過ごしたいか考えることが大事。」

と締めくくり、2020年への期待がますます高まるイベントとなりました。

参加者の感想(一部抜粋)

  • 自分の会社ごとと思って参加しましたが、まずは自分でキャリアをどうしたいか、今後、どう生きていきたいか、考え始めたいと思います。
  • 個人的に会社に求めているものが“わがまま”なのかなと思いがちでしたが「会社が個人に合わせる時代」との話があり、自分の課題観や想いを強く持ち行動していってよいのだと背中を押されたような気持になりました。
  • 正直「日本もこんなに進んでいるのか、、」です。ビックリすると共に「うちの会社は大丈夫だろうか」と危機感を抱いてしまいます。うまくTOPを巻き込むことができるかが最大の課題ですが、これをきっかけに動きたい!!と思いました。
  • 「できない理由を探さない、どうにかできる方法はないか」を念頭に来週から取組んでいければと思います。
  • きれいごとではなく、現場の課題に切り込んだ内容で共感できる話しだったと思います。男性育休など取組みレベルから「生き方改革」まで非常に幅広く考えるきっかけになりました。
  • 転勤の必要性については、本人の希望を基に対応することが重要であることを認識しました。本人の自律性・意思表明が 大切であると考えます。
  • 経営者に参加してもらいと思いました!
  • 改めて自社で取り組むことについて考え整理することができましたし、背中を押しえてもらえました。




【主催】NPO法人ファザーリング・ジャパン イクボスプロジェクト
【記事執筆】同理事  林田 香織