[結果発表] 第二回イクボス充実度アンケート調査

【レポート】5/30(木)「ワーキングファーザーを活用するイクボスとは」(福岡市)

[公開日] [最終更新日]2020/06/12


令和元年5月30日(木)、アクロス福岡 円形ホールにて「ワーキングファーザーを活用するイクボスとは」をテーマとするセミナーが開催されました。

これまで3回にわたってワーキングファーザーを対象としたイベントを実施。その中で仕事も育児も両方を欲張りたい父親たちの声が多く集まりました。

今回は、企業向けに、そのワーキングファーザーを応援、活用するため経営者、管理者はもちろんのこと、当事者のパパ、応援する同僚の方など多くの方々に参加いただきました。

おおいに盛り上がったこの日の様子を写真とともにレポートします。

【第1部】講演「ワーキングファーザーを活用するイクボスとは」

<安藤哲也氏プロフィール>

1962年生。出版社、IT企業など9回の転職を経て、2006年に父親支援のNPO法人ファザーリング・ジャパンを設立。「笑っている父親を増やしたい」と講演や企業向けセミナー、絵本読み聞かせなどで全国を歩く。最近は、管理職養成事業の「イクボス」で企業・自治体での研修も多い。厚生労働省「イクメンプロジェクト推進チーム」顧問、にっぽん子育て応援団 共同代表等も務める。 著書に『パパの極意~仕事も育児も楽しむ生き方』(NHK出版)、『できるリーダーはなぜメールが短いのか』(青春出版社)など多数。3児の父親。

2006年に「笑っている父親を増やす」を掲げ、NPO法人ファザーリング・ジャパンを立ち上げた安藤氏。

「笑っている父親を増やすにも子育てができる環境が整わないととダメだと思った。日本は同調圧力がすごかった」と振り返ります。

結婚して子どもを授かれば父親には誰だってなれる。重要なのは「父親をする」ということ。

あるアメリカの調査によると、「お父さん効果(The Father Effect)」というデータがあり、父親が育児をするほど子どもの人生は幸せになりやすい傾向にあるといいます。日本はなかなかできない状況に葛藤する日々。これまで全国4万人のパパたちをみてそう感じたそうです。


安藤氏の転機となったのが、2003年。大手IT企業で部長時代に家族との状況が悪化し、思い直したことをきっかけに働き方を変えることを決めたといいます。

そこからファザーリング・ジャパンを設立し、いたるところで父親向けのセミナーや座談会などを実施していきます。「パパ同士がたがいに膝詰めで話をします。ピアカウンセリングがとても効果があります」。ちなみに最も盛り上がるのがママへの愚痴だそうです。

さらにはいわゆる「名もなき家事」をも積極的に行うことを勧めます。それをやることによりママの負担も軽くなり、家計収入も増える。「もう一人いいかなと思える社会にしていかないと少子化対策にはなりませんから」と安藤氏。

地道な活動を通じてイクメンは増えました。しかし新たな課題に直面します。イクメンを理解せず、いつまでも古い価値観の上司です。その解決のために2014年、「イクボスプロジェクト」を始動させました。


イクボスとしていかに職場の生産性を上げていくか?に話は移ります。

昭和の時代まではタイムマネジメントだけでよかった。しかしイクボスのタイムマネジメントは「公私混同」「ライフを応援する」。ムダな会議などを6掛けに減らして、多様性を掛け合わせて1.2倍に成果を出す。

つまり「社員の幸福度を上げることで成果はおのずと出る」と安藤氏はいいます・


サイボウズの青野社長は3回育児休暇を取得しています。子育てしにくい環境になって子どもが増えなかったら、自社のサービスを使ってくれる人たちも減っていきます。

「子育ては一大事業だと青野さんはおっしゃいます。会社のトップがそんなことを言う時代になったんです。」


ワーキングファーザーが活躍することで、いろんな成果が出てきます。

  • 家族が円満になる
  • 職場の生産性が上がる
  • 社会全体として子どもを生み育てられる
  • 女性が仕事を安心して続けられる
本来は女性活躍ではないんですよ。もともと女性が活躍できるのに、活躍できない環境を作ってきた、そうなってきたんですから

 

まず私たちが取り組むべきは「男性の育児・家事参画」。

ボーリングで例えると、一番ピン。そこに当たればいろんな課題が解決に向けて走り出します。1列目からはじまって最後の社会問題である人口減少や少子化対策にも波及していく。

そのためのキーパーソンが、ワーキングファーザーなんです」と、最後を締めくくり第一部が終了しました。

【第2部】講演「ワーキングファーザーの主張」

<内海氏プロフィール>

40歳・高校の同級生の妻と8歳&5歳の姉妹のパパ。福岡市博多区生まれ。実家の居酒屋で育ち大学から上京。新卒で名古屋の老舗繊維専門商社に入社し「人事・海外生産管理」を経験。その後リクルートグループで「エージェント業」に従事し、東日本大震災に千葉で被災し、JRグループの商業デベロッパー「JR博多シティ」へUターン転職。次女の誕生を機に7ヶ月間の育休を取得し、様々な「経営」「働き方」「人・組織」に触れる。数々の企業経営サポートや人事採用コンサル、さらには自身のキャリアチェンジの経験を生かすべく株式会社ビズリーチへ転職し、現在は福岡オフィスの立ち上げメンバーとして、九州の企業様の「採用力」向上を支援。趣味はマラソン、特技は家族を愛すること。

内海氏が育児に目覚めたのにはきっかけがありました。

それは結婚6年目で迎えた次女の誕生。聴覚に生まれつきの障がいがありました。涙を流す妻の傍らで見守ることしかできなかった自分自身とは対照的に、次女はもちろんイヤイヤ期の長女の育児や家事全般に奔走する姿に、自分が変わらなければと決意します。

とにかく「妻の負担を軽くしたい」と、妻を第一に考え育児に専念することを決意したといいます。

32歳のとき東日本大震災が起こり、「家族や命の大切さに気付かされた」と語る内海氏は「このままではいけない」と思い、福岡へとUターン転職を決意します。3社目の転職先である某グループ会社では7ヶ月の育児休業を取得。当時としてはグループで最長記録、「よく取ったな」と周りから言われたそうです。

次第に見識を深めるため、持ち味のフットワークを生かし行動の範囲を広げ、NPOや経営者のネットワークにも積極的に参加するようになった内海氏。「あらゆる働き方や生き方に触れることになり、課題は個人はなく社会に方にあることに気づくようになった」といいます。

 

後半には内海氏【ワーキングファーザーとして大切にしている4つのこと】について紹介。


ワーキングファーザーとして時間管理にも工夫を凝らしている内海氏。

たとえば飲み会やつきあいがあるときは、一度自宅に戻り妻が帰ってきてバトンタッチをしてから出かける。また人から相談の依頼があったときは早朝やランチ時にそれを充てる。

これは現在の勤務先でもあるビズリーチ流の指針「できる理由を考える」ことが影響しているとのことでした。


あるとき読んだ『アライアンス』という一冊の本が、内海氏の中にある「会社と個人がどうあるべきか」という考え方を変えるきっかけになりました。

会社と個人は対等でいいんだ。20代のときは社内評価が一番でしたが、今は評価の軸を階層化(上の三角形の図)して、上に家族の評価を一番に置いています。つまり家族からの評価がなければ、社内外の評価はついてこないというマインドになりました」。

その結果どうなったのか?

「自然と会社の中でのパフォーマンスも肩の力も抜け、社外に出るといろんなことが吸収でき自在にアウトプットできるように。具体的に年収が上がったり外部での表彰されるようになると、家族も『頑張っているね』と言ってくれ良いサイクルになっています」。

 

家族評価を最優先にすることで、仕事にも好循環が生まれ、半年前ほどから5人のチームを率いるようになったという内海氏。

これから父親になるメンバーには、自分みたいに人生を楽しんでもらいたいなあと思っています」。

イクボスへの道を着実に歩み始めているようです。

【第3部】九州イクボスプロジェクトのご案内


最後に、九州イクボスプロジェクトのリーダーであり、自らもイクボス経営を実践し、成果を上げているOZcompayの小津代表より挨拶。

「子育てを行い、地域に参画するようになると、周り回って仕事に帰ってきました。仕事以外のことがゆくゆく仕事になるんです。だから部下には仕事以外の大切さを言えるようになりました。それを体験させてもらい、イクボスの大切さを実感しています。」

イクメンが広がってもイクボスが不在ならば社会は変わらない。家族・地域・そして社会へと笑顔のサイクルが広がっていくことを伝えていく。

「そのために地元九州の企業とも連携しつつ、ときに支援をいただきながら広げてきたいと思います」と力強い言葉で締めくくりました。