[結果発表] 第二回イクボス充実度アンケート調査

【第15回】宮崎高志さん|(株)リフォーム三光サービス 代表取締役社長

[公開日] [最終更新日]2020/06/13



今回のイクボス・インタビューは、洋服直し専門店株式会社リフォーム三光サービス代表取締役の宮崎高志さんが登場。「人を大切に、物を大切に」をモットーに、長年着ていなかった洋服を蘇らせる事業をてがける。現在九州に35店舗展開中。

<宮崎高志さんプロフィール>
地元の高校を卒業後、株式会社リフォーム三光サービスに入社。専務取締役就任を経て、2011年同社代表取締役に就任。現在に至る。12歳男の子、6歳女の子のパパ(2015年1月現在)。

長時間労働をやめる。価値を高めることで短時間に

小津:まずは従業員の働き方という点に関して宮崎社長のお考えをお聞かせいただけますか。

宮崎:営業時間の都合上、今までは独身の方しか採用できていませんでした。最近では短い労働時間であっても技術が高い人が多くなり、またファッションにも関心ある人の方が新しいニーズを満たしたりするので、無視できなくなりました。なので短時間を希望されても積極的に採用するようにしています。働き方も長時間をやめて価値を高めて短時間で仕事を終わらせる。行政側からもそのような対応を求められてきているときですし、管理の面からも長時間労働だといろんな問題が発生しうるわけですから、価値を高めて短時間へとシフトしています。

小津:求める人材も変わっていっていますね。

宮崎:そうですね。「その人がいないと成り立たない」というところでも企業としては困ります。できれば分担して仕事ができる人、そんな人の中にも能力が高い人がたくさんいます。働き方にしても、仕事も店頭でやる以外にも、自宅でもできる、外注先としてなどいろんな働き方はできますからね。これからは長年の経験と技術だけの人材が必要なわけではなく。今の時代のニーズにマッチした人や提案ができる人が求められてきているし、会社としてもそのような人材が必要です。

働きがいそのものが、店舗の売上を決める

小津:柔軟な働き方を組織に浸透させる上で、従業員には会社のトップとしてどのようなメッセージを発信していますか?

宮崎:昔は単にお直しをすればよかった。いまは「求められるファッションに近づけるためのやり方のひとつとしてお直しがありますよ」という提案をしてあげないと。だまっていても注文はもらえません。昔は服自体が売れていたので、今は反対に価値を提案をしてさしあげて、やっと「価値があるので注文します」となるわけです。経験に裏付けされた技術も必要ですけど、価値を提案できるアイデアがある人も同時に必要。うまく絡ませていくことが大事ですね。

小津:アイデアや発想は働きやすさや会社への愛着がないと出ないですよね。そのためにも柔軟な働き方を進めていく会社の考え方であったり、イクボスが必要と思います。

宮崎:そうですね。働きやすい環境づくりやシフトはつねに話し合っています。従業員が満足してこそ、顧客満足ですからね。待遇は他社よりずば抜けてよいとは言えませんが、もちろん労基を満たした上で希望する働き方はしてもらっています。なによりも一番は、自分の成長が止まらないような仕事を与えることですね。もっとファッションを学びたいとか、センスを磨きたいといった希望者に対しては、それがかなうよう他の店舗への配属を検討しています。

小津:ジレンマなのが人件費の面ですよね?人の育成自体はすぐには売上には直結しないわけですから。

宮崎:最初はもちろん長時間労働で動いてもらった方が短期的に見ると人をたくさんの揃えるよりも効率がいいです。ただ顧客接点となったときに、やはりお客さんとしてもワクワクできないというか、自分が受けた仕事は自分がすべてやらないといけないとなった場合、なかなか積極的に提案しようとしないもの。分業であってもなにかあれば周りがサポートするといった体制があれば積極的に提案しようとします。自己完結でおわる仕事のやり方ではいずれ会社をやめていきますし、やめていって新しい人を入れるだけでは、顧客満足も上がらず、売上も上がらない結果になりますよね。そのあたりは働きがいそのものが、店舗の売上を決める実感としてあります。

<イラスト:東京新聞>

残業ゼロの浸透、主婦層の積極的な採用

小津:イクボス・プロジェクトでは、「イクボス10カ条」というものを作っているのですが、ご自身にあてはめてみていかがですか?

宮崎:「組織浸透」はまだまだ課題ですね。

小津:「残業をゼロにしよう」といった指導は?

宮崎:残業しないためのシフト作り、主婦層を積極的に採用しようとしていますし、「時間捻出」の点でも、求められる希望する時間は合わせるようにしています。

小津:「隗より始めよ」、社長自ら仕事をふくめて人生を楽しんでいますか?

宮崎:はい、楽しんでますよ。私には12歳(長男)と6歳(長女)の子どもがいます。平日の夜は付き合いもあるので、なかなか家族と過ごす時間がとれないこともありますが、週末は長男が野球をやっているので、審判やコーチをしています。娘も連れていきます。娘のピアノやバレエの発表会にももちろん行きますね。

現状維持ではなく意識を変えないといけない

小津:これから日本の人口が減って、市場環境がますます厳しくなると言われています。

宮崎:おっしゃるとおりで、そのためにも仕組みをいま作っておかないと本当にこれから厳しくなると感じています。変わろうとする、つねに現状維持ではなく、社員さんだけでなくパートさんにもその意識で仕事にのぞんでもらうことが課題です。

小津:従業員がいかに働きやすい環境を僕ら経営者が作っていかないといけないですね。

宮崎:経営していて本当に実感するようになりました。大事だなあって。以前は思っていないわけではないですけど、優先すべきは仕事だけだと思っていました。でも今では仕事優先がゆえに、社員を大事にしないと、結局やってもらっているのは社員さんやパートさんですし、顧客接点のところでもありますしね。

満足してずっと働いてくれるのが経営にもよいこと

小津:経営者の給料ってどこから出るかといえば従業員が働くからこそなんですよね。僕ら経営者は現場にいて働くわけではありませんからね。ましてや僕なんか保育士の資格も保育経験もないわけですし。従業員がいなくなったら終わりですからね。

宮崎:わたしも実感としてはあります。人がやめて新しい人を入れて教育するのにも時間がかかりますからね。それだったら満足してずっと働いてくれるのが経営的にもよいこと。

小津:僕はよく講座なんかでも言っているのですが、仕事以外のことがまわり回って仕事に返ってくる。もちろん仕事も大事なんですが、家庭とか地域とか直接仕事とは関係ないのですが、いろんな人と交流することでアイデアやネットワークが広がりますからね。

宮崎:そうですね、大いにあると思います。従業員も同じ視点を持ってもらって会社で活かしてもらえるともっとよい仕事ができる。ワークライフバランスが組織にも浸透すれば相乗効果あると思います。

小津:宮崎社長、今日はありがとうございました。


インタビュー:小津智一(ファザーリング・ジャパン九州理事)