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【イキマネコラムvol.56】制約ある働き方を体験してみようという研修『なりキリンママ・パパ』の効果

[公開日] [最終更新日]2021/12/23

【イキマネコラムvol.56】制約ある働き方を体験してみようという研修『なりキリンママ・パパ』の効果

『イキマネ』とは、女性が「イキイキ」「活きる」マネジメントのこと。
組織の中で女性本来の良さが発揮できるマネジメントを目指すこの手法について、ハピレボプロデューサーであり、株式会社オフィスat 専務取締役の阿部博美氏による連載記事を配信します。
(※)このコラムでは、イクボスを推進するプロジェクトメンバーによる寄稿記事を配信しています(記事一覧)。

 




このコラムでは、女性にイキイキと働いてもらうための手法を様々にご紹介しています。けれどもそれはあくまでも「手法」です。Aの場合はBという風にすればいいですよ、というノウハウはお伝えできても、じゃあA’の時は?Cの時は?と全部お伝えすることはできません。一番大事なことは、相手のことを知ることで理解を深め、彼女が今見ている景色を想像する力をつけること。そしてその時に必要だと思う言葉をかけてあげることです。

けれどもその想像力が乏しいと、せっかくの配慮が付け焼刃になっていたり、腫れ物に触るような態度になってしまい、逆効果になることがしばしばです。そしてだんだんと「だから女はめんどくさい」となって思考がストップしてしまうのです。

それを防ごうというのが、タイトルにある『なりキリンママ・パパ』という研修です。頭で考えるのではなく、実体験することで想像力を鍛えるという、かなり面白い取り組みです。

『なりキリンママ・パパ』はキリンビールが取り組んでいる社内研修のひとつです。部署単位で取り組むもので、順番に1人の社員が1ヵ月間ママもしくはパパになったと仮定します。なりきった人は、時短で帰るのはもちろん、期間内には不意打ちで「子どもが熱を出したので迎えに来てくれ」という電話がかかってきたりもします(もちろんダミーですから人事からの電話です)。

時短で毎日皆より先に帰宅する、あるいは突然帰らなくてはならない状況に陥った時、どんな気持ちになるのかは、やはり体験してみないと想像できないことでしょう。また、時短で帰るために仕事の計画をどう組み立てるかとか、情報を共有しておく必要性など、頭でわかってはいてもやってみるとその通りに行かない、などもいい経験となります。「ママ・パパ」に抵抗がある年代の人には「介護」という設定もあるようです(笑)。

2014年に始まった研修ですが、取り組む際には様々な抵抗勢力もあったようです。ただ、実際に研修したチームのパフォーマンスが落ちていないという現実を見て、その力も徐々に小さくなっているそうです。研修は手を挙げた部署が取り組むのですが、今では「えっ?まだやってないの?」という同調圧力さえ生まれているとか。

研修することで、上司やチーム全員が育児期女性のことを理解できるようになるのは当然ですが、若い独身社員のキャリア形成にも影響を与えています。将来こんな風にして働き続けられるんだなと体験することができ、将来への不安が消えていくという効果もあるようです。

実は私自身子育て経験がないのですが、仕事で多くのママたちと接する中で初めて知ったことはたくさんあります。ですから、私のように接する機会が多かったり、よほど関心を持たなければ気づかないのは当然だと思っています。
ただ、知れば知るほど、乳幼児期のママはこんなに大変なのかと驚愕することだらけですし、そこまで努力していることを知らないのは罪だとさえ思います。知ることで理解が深まれば「子どものために早く帰ってあげて」と自然と言葉は出てくるはずですし、それは「配慮しなければ」などと意識するまでもなくなるはずです。

 

👉今回のPOINT

1.女性マネジメントのキモは、相手の立場を想像する力
2.頭で考えるより体験してみることが一番
3.配慮するのではなく、自然と思いやれる組織へ

 

 

このコラムでは、組織の中で起きがちなミスコミュニケーションを軸に、様々なポイントやコツをお伝えします。ぜひ違いを知って、新しい視点を楽しんでみてください。

そして、女性たちが存分に能力を発揮でき頼もしい戦力となることで、力強い組織となるためのサポートとなればと思います。

 




<阿部博美・プロフィール>

阿部博美
株式会社オフィスat 専務取締役/ハピレボプロデューサー。産業カウンセラー、キャリアコンサルタント。

自称「女ゴコロ翻訳家」。男女の本能からくる意識や行動の違いを、様々な具体的場面に落とし込み、お互いの理解を深め相乗効果を上げることを目指す。企業活動の中では、女性客の本音を翻訳しマーケティング設計に繋げ、組織の中では、お互いの強みを活かし合える風土づくりに繋げている。
現在、女性目線を専門とするマーケティング会社を経営。商品やサービスについてはもちろん、近年は採用ブランディングや女性活躍推進の相談を多く受けている。それらの中で、女性社員や外部の主婦など、女性チームをマネジメントする場も多い。新卒から15年間携わった人材派遣業界での女性マネジメントや、派遣先企業と派遣スタッフとの間での翻訳経験が非常に役立っている。