[結果発表] 第二回イクボス充実度アンケート調査

【第34回】近河昌利さん&安田智美さん(株式会社 ペンシル)

[公開日] [最終更新日]2020/06/13



今回のイクボスインタビューは、株式会社ペンシルのG&C事業部ゼネラルマネージャー・近河昌利さん(写真上)と、執行役員CCOビジネスマーケティング局局長・安田智美さんが登場。同社は1月20日、イクボス企業同盟に参画し、調印式を済ませたばかりです。

ペンシルは、WEBコンサルティング会社として1995年に福岡で創業。コンセプトワークによるWEB戦略策定から、サイト分析、サイト構築、システム開発、アクセス解析など、企業のWEBサイトに関係するすべての工程を請け負い、一気通貫でWEBコンサルティングを行っています。取引先には世界的な大企業も多く、東京ほかサンフランシスコ、台湾にもオフィスを構えています。

同社には、一般的に社会的弱者と呼ばれる人たち(女性、高齢者、障がい者など)も活躍するフィールドがあると言いますが、どのような取り組みをされているのでしょうか。

残業短縮のためチーム体制に 業務を切り分ける仕組みづくりも

―従業員の男女比を教えていただけますか?

安田:全社で130人ほどです。男女比は5:5。日本のIT企業では8:2程度が多いと聞くので、同業他社に比べると女性の比率が高いですね。産休、育休を経て働き続けている女性もいます。

―近河さんの部署は、主にどのような業務をされていますか?

近河:一クライアントを専門に担当する部署です。部下は女性2人、男性9人。男性6人が既婚者で、あとは独身です。他の部署に比べると平均年齢が高く、既婚者も多いですね。

既婚者には全員小さいお子さんがいて、「子どもが急に熱を出したから」と早退したり、「子どもを病院に連れていくので遅刻する」ということがよくあります。そのような時は在宅勤務に切り替えるなど、状況に合わせて対応しています。

基本的に”時間”で管理するのではなく”成果”を見るのがペンシルの社風です。自由度は高いのですが、そこに自己責任が伴いますね。

―会社として、父親をフォローする制度を作ったのですか?

近河:いいえ。子育て真っ最中の部下が、チームで仕事が回せる仕組みを作ってくれたのです。おかげで、1人が休んでも他のスタッフがきちんとフォローできるようになりました。案件が発生する度、常にチーム全員で情報を共有するようにしているので、わざわざ関係者全員をあつめた会議を頻繁に開くことはしていません。

そもそも、チームを組んだ理由は残業時間の短縮でした。実際、残業は減りましたね。私自身、終業時間の19時頃にはなるべく帰るよう心がけています。私が真っ先に退社することで、スタッフも「帰っていいんだ」と思えるでしょう?10数年前は私も若く、これからWEBの時代だ!というときだったので、仕事が楽しくて夜遅くまで働いていました。

ただ、自分が好んでそうしていただけで、同じような働き方が合う人ばかりではないと思っています。今は私も共働きで、妻もフルタイムで働いています。私は20~21時ごろに帰宅していますが、それでも妻より遅くなるので、やはり家事や育児の負担は妻の方に偏りがちですね。

また、最近は家庭重視の人が増えたように感じます。特にここ1年ほどでしょうか。私の部署には東京から、Iターン、Uターンで入社した男性が3人いるのですが、彼らは仕事ができる上に家族も大切にしています。

―チームで働くということは、個人の負担が増える可能性があります。不満は出ませんでしたか?

安田:業務を切り分けているので、個人の負担が多くなるということはありませんでした。
当社では「メイト制度」というシステムを導入しています。子育てや介護で就業時間に制限がある方たちを、各部署から切り分けたコンサルティングのサポート業務などを専門に行う「メイト」として雇用しているのです。工数管理がしやすい業務を担当していただいているので、残業がなく、好きな曜日、時間で働くことができます。

そして、メイトさんのおかげで、コンサルタントはよりコンサルティングに集中することができるのです。また、愛宕に「PIC(ペンシルイノベーションセントラル)」というサテライトオフィスを作りました。天神にある本社までの通勤が難しい方のために開設したのですが、今後もこのようなオフィスを増やしていきたいと思っています。
(クリスマス前の社内の様子 出社が楽しくなりそう)

ダイバーシティは”当たり前” 個人に合わせて柔軟に制度を構築

―御社は「多様性」を大切にしていると伺いました。

安田:私たちはサービスを提供する会社なので、コンサルタントやエンジニアから生み出されるアイディアが商品と言えます。そして、いろいろなアイディアを思いつくためには多様な人材が必要です。

例えば、主婦層向けの商材を扱っているお客様の案件では、現役主婦のメイトさんに意見を伺いました。アクティブシニア採用で入社した61歳のメイトさんもいますので、そのような方の意見はシニア層向けのWEBサイト改善にも活かしていけると思います。

また、当社は、性的指向、性自認を理由とする差別やハラスメントを一切行わないことを企業行動憲章に明記し、同性カップルでも結婚祝い金などの福利厚生が受けられるなど、LGBT当事者への取り組みを実施したり、外国籍のスタッフが活躍していたりと、多様な人材が対等に関わり合いながら組織に参加できるような環境を目指しています。

―いろんな人が働くことで、社員も刺激を受けますか?

近河:社内勉強会などの機会を設けて、話をしてもらうこともあります。60代の社員には定年を迎えてからの働き方や今までの経験から部下のマネジメントに関する話などが聞けて、非常に興味深かったですし、LGBT当事者の方には、接客やWEBサイト上での表記で避けた方がいい言葉などをレクチャーしてもらい、ある不動産会社のコンサルティングに活かしました。

―ダイバーシティといえば「女性の活躍推進」というイメージが強いですが、そうではなく、本当の意味での多様性が活きているのですね。
最後に、イクボス10か条の中で、特に大切にしていることはありますか?

近河:意識的に行っているのは「組織浸透」です。例えば、会議は話し合うべき内容を始めに決めておきます。一旦、終わりかけたのに「そういえば、、、」とだらだら続いてしまいがちですが、決められた案件以外はしない。これを続けることで、社員にも無駄を省く、時間を有効に使うという意識を浸透させています。

安田:しいて言えば「ダイバーシティ」でしょうか。

ただ、当社はダイバーシティという言葉を特別意識したわけではありません。ダイバーシティというと、社会的弱者と呼ばれる女性や障がい者などを”救済する”というイメージがあると思います。しかし当社の場合は、「女性だから」「障がい者だから」という考え方ではなく、すべての社員がそれぞれのライフステージやライフスタイルに合った働き方をしてほしいと思っているのです。

130人いれば、それぞれ家庭環境や考え方も違います。1つの大きな制度を作ってそれを福利厚生に、というのではなく、1人1人に合わせたカスタマイズ制度を作るという方針です。創業時からの考え方でそうして20年が経ちました。私たちにとって、ダイバーシティは”当たり前”なのです。
(社内で記念撮影)




近河さん、安田さん、ありがとうございました。

自分のライフスタイルを大切にしながら働ける―。ようやく日本で浸透し始めたダイバーシティが、創業当時から自然に築かれてきたという事実に驚かされました。

ペンシルの行動規範には、「べた塗り禁止」という項目があります。「多様な色・個性を活用し最良の結果を得る」という意味だそうです。まさにその規範通りに、多様な社員がいきいきと働いている同社の今後がますます楽しみです。

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