[結果発表] 第二回イクボス充実度アンケート調査

【イキマネコラムvol.51】女性への配慮だけでは、他の社員の不満につながる

[公開日] [最終更新日]2021/10/14

『イキマネ』とは、女性が「イキイキ」「活きる」マネジメントのこと。
組織の中で女性本来の良さが発揮できるマネジメントを目指すこの手法について、ハピレボプロデューサーであり、株式会社オフィスat 専務取締役の阿部博美氏による連載記事を配信します。
(※)このコラムでは、イクボスを推進するプロジェクトメンバーによる寄稿記事を配信しています(記事一覧)。

 




先日、友人の経営者からこんな悩みを相談されました。

育児女性に対する「配慮」が、他の社員にとって「不満」になっているそうなんです。直接耳に入ったわけではないので、今は知らん顔をしているが、社内でフツフツと渦巻いている気がする、今のうちに何とかしないと、ということでした。

女性に対する配慮とはこのようなことです。

2年ほど前に採用したパート社員の女性が、非常に優秀だったのと本人の希望もあり、最近正社員に登用しました。小さな子どもを育てているので、フルタイムではありますが残業はできません。そのハンディを抱えていても、経営者としては手放したくないという判断でした。

彼の会社は企画会社で、土日の出勤もあったりイベント前には残業が続くこともよくある、マッチョな働き方の会社です。そんな職場環境の中にあって、残業せずに帰る女性に対する他の社員たちの不満が渦巻いているのです。

これは、女性の働き方に対する経営者の意識が、まだ「福祉」の段階で留まっていることにあると思います。現場にいた女性が優秀だったから、たまたま登用したけれど、まだ「経営戦略だ!」とまでの腹落ちをしていないようです。だから、社員の気持ちもわかるし、彼女は手放したくないしという狭間で悩んでいると思われます。

この場合は、女性の働き方だけに「配慮」していることが問題と思います。会社全体の働き方、つまり全員の残業を失くすなど改革をしなければ、不満はなくなりません。

「そんなのムリ」という声が聞こえてきそうですが。。。

 

実は、長時間労働は組織の関係性の質を下げ、結果生産性も下がると言われています。

これは、MIT(マサチューセッツ工科大学)のダニエル・キム教授が提唱した、「心理的な安心感」が担保され「関係の質」があがると、「結果の質」もあがるという、組織の成功モデルによります。


働き方改革の著書もたくさんある、白河桃子さんはこう言います

職場のギスギスした関係の原因は、「長時間労働」による「思考停止」「コミュニケーション不足」や「勤務時間による差別」(育児や介護で長時間労働ができなくなると二流社員扱い)であることが多いのです。

だから、「労働時間」に一番に着目することで、さまざまな課題が見えてきて、それを解決することが「正のサイクル」へとつながるのです。

 

今回の問題は、まずはトップである経営者がこの考え方をしっかりと腑に落とし、そして実践する旗を振り続けるしかないのではないかと思います。

これまで同様のやり方ではどちらの側にも不満が溜まります。組織全体がワクワクする生産性の高いものになるかどうかは、結局は経営者である彼の意識改革からなのです。

 

👉今回のPOINT

1. 女性への配慮は、福祉ではなく経営戦略
2. 長時間労働は職場のギスギスを生む
3. まずは経営の意識改革

 

 

このコラムでは、組織の中で起きがちなミスコミュニケーションを軸に、様々なポイントやコツをお伝えします。ぜひ違いを知って、新しい視点を楽しんでみてください。

そして、女性たちが存分に能力を発揮でき頼もしい戦力となることで、力強い組織となるためのサポートとなればと思います。

 




<阿部博美・プロフィール>

阿部博美
株式会社オフィスat 専務取締役/ハピレボプロデューサー。産業カウンセラー、キャリアコンサルタント。

自称「女ゴコロ翻訳家」。男女の本能からくる意識や行動の違いを、様々な具体的場面に落とし込み、お互いの理解を深め相乗効果を上げることを目指す。企業活動の中では、女性客の本音を翻訳しマーケティング設計に繋げ、組織の中では、お互いの強みを活かし合える風土づくりに繋げている。
現在、女性目線を専門とするマーケティング会社を経営。商品やサービスについてはもちろん、近年は採用ブランディングや女性活躍推進の相談を多く受けている。それらの中で、女性社員や外部の主婦など、女性チームをマネジメントする場も多い。新卒から15年間携わった人材派遣業界での女性マネジメントや、派遣先企業と派遣スタッフとの間での翻訳経験が非常に役立っている。