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【第23回】石坂博史さん(NTT都市開発株式会社 経営企画部 広報・マーケティング室長)

[公開日] [最終更新日]2017/04/21



イクボスロールモデルインタビュー第23回は、「イクボス企業同盟」に加盟し、NTTグループの一員として「女性リーダーの育成」「仕事と育児の両立支援」「働き方改革」を推進するNTT都市開発株式会社の石坂博史さん。

経営企画部 広報・マーケティング室長として部下を率いながらも、地元・世田谷区の子育て支援団体である「おやじの会」のメンバーとして地域の子どもたちと積極的に交流。子どもが通う小学校で読み聞かせボランティアの活動も行う “地域内イクボス”でもある。「おやじの会」や読み聞かせにまつわるユニークなエピソードも披露され、笑いの絶えない和やかな雰囲気の中、“石坂流”イクボスの価値観について伺った。

〈石坂博史さんプロフィール〉
NTT都市開発株式会社 経営企画部 広報・マーケティング室長。1967年生まれ。大学卒業後NTTに入社し主に法人営業系の業務に携わる。2012年、グループ会社であるNTT都市開発株式会社に異動し、経営企画部に。小6の女の子、小2の男の子の父親であり、妻も共働きで頑張っている。

「朝、子どもを保育園に連れていくのは自分の役目」と決めた

安藤: 石坂さんは、ご結婚はいつされたのですか? 結婚前の働き方はいかがでしたか?

石坂: 結婚は34歳の時でした。結婚前は、週に何日も徹夜しながらガンガン働いていましたね。スキルや経験のない若い自分が、会社の中で自分なりの役割を果たすためには、徹夜してでも何でも、仕事の“量“で勝負して、先輩たちに負けない仕事をしたいと思いながら働いていました。当時はそれが楽しかったです。

安藤: 確かに、仕事に打ち込むことで人間的にも成長する部分はありますよね。

石坂: そうですね。仕事に打ち込んでスキルや経験を積み重ねることで、周りの人からも信頼されますし。もともと体育会系気質で、上司から叱咤激励されたりするとますます燃えるタイプなので(笑)、かなり長時間労働していました。

安藤: 僕も石坂さんと同世代で、20代の頃はまさに石坂さんと同じような働き方をしていましたよ。当時は、「この働き方でいいんだ」って信じていました。結婚後、働き方は変わりましたか?

石坂: いえ、結婚後もしばらくは、仕事人間でした。ただ、僕の両親は共働きだったのですが、バリバリ働くお袋を親父がものすごく大事にしていて、掃除や洗濯なども率先して行ってお袋を支えていたのです。小さい頃からそんな両親の姿を見てきていたせいか、掃除、洗濯、ゴミ出しなどは、自分から進んでやっていましたね。平日は相変わらず長時間労働でしたが、一人暮らしが長く、料理も嫌いではなかったので、週末は時々僕が料理を担当して妻にふるまっていました。僕が料理を作るたび、妻が「おいしいわ、あなたの料理」ってほめてくれまして。妻は僕をおだてるのがうまいのですよ(笑)。

安藤: ほめ上手な奥さん。夫をその気にさせて、すごいですね。

石坂: そうですね。奥さんって、ある意味“家庭でのリーダー”じゃないですか。そういう目で妻の家庭でのマネジメントや仕切り方を見ていると、あらゆる面で何もかもかなわないんですよ。多分、他のご家庭でもそうだと思います。当社では女性活躍を推進していますが、“家庭でのリーダー”としての妻の働きぶりを見ていると、「(男性よりも)女性のほうが、マネージャー資質がある」ということをつくづく感じます。

安藤: なるほど。確かにそうですね。その後お子さんが生まれ、育児とどのように向き合ったのですか?


石坂: 住まいのある地域は待機児童が多く、保育園に申請しても落ちてしまって、妻がしばらく育児休暇をとっていました。妻の職場復帰後も、仕事は相変わらず忙しかったですね。でも、子育てにはしっかり関わりたかったので、妻と話し合い、僕が毎朝子どもを保育園に連れていくことを決めました。夜は帰りが遅くなり、子どもの寝顔しか見られないだろうから、朝の時間を子どものために使おうと考えたのです。

でも、子どもを保育園に連れていくだけでもひと仕事じゃないですか。雨の日などは大変でしたね。僕、スーツが大好きでこだわっているのですが、保育園に遅れそうな時は「スーツがぬれる」なんて言っていられないので、ぬれねずみになりながら娘を抱きかかえて走ったこともあります。毎日必死でしたが、短い時間でも子どもと関わり続けると、子どもはパパのことを大好きでいてくれるんですよね。園まで一緒に歩きながら「パパ、きれいなお花が咲いてるよ」と教えてくれたりなど、たわいもない会話もとても楽しかったです。時がたち、今では二人とも小学生になり僕の朝の仕事は一つなくなりましたが、「関わり続けてきて正解だった」と実感しています。

安藤: いいですね。それが、僕らが言っている“パパスイッチ”なんです。パパが子どもと積極的に関わることで、子どもから楽しさや嬉しさを返してもらい、親子でいっしょに成長していけるんですよね。“パパスイッチ”が入った男性って、「自分の子どもだけではなく、子どもみんなが幸せになれるようなことができないだろうか」と考え、地域活動を始める方も多いのですが、石坂さんはいかがでしたか?

「強制しない」「厳しくやらない」が基本ルールの「おやじの会」は、スーパー前向き思考

石坂: まさにそのような思いで、上の娘が地元の塚戸小学校に入った時に、PTAとともに小学校の子どもたちがすこやかに育つための支援活動を担う「おやじの会」に入りました。

安藤: 雰囲気はどうですか?

石坂: すごく良いですよ。世田谷でも一番大きく、都内でも有数の大型校の「おやじの会」ですが、学校の先生方や地元との連携も良くて、「強制しない」「厳しくやらない」が基本ルールで、「各自が仕事や家庭の都合を考えながら、できる範囲でできることをやろう」というスタンスなんです。自ら積極的に子育てや家庭に参画している父親たちばかりなので、アットホームで楽しいですね。「おやじの会」のメンバーって、皆、スーパー前向き思考なんです。いろいろ活動しながら「今度はこういうのをやろうぜ」とか、アイディアがどんどん出てくるんですよね。

安藤:「皆がいつも笑顔でいられるために、自分たちができることをどんどん探そう」という感じなのですよね。会社組織だったら、こんな部署に新規事業をまかせたいですよね。「おやじの会」の中で、思い出に残っている活動はありますか?

石坂: たくさんあるんですけど、僕自身も含めて楽しいなと思ったのは、野外でパンを焼いて食べるイベントです。竹竿に、パンのタネをコロネみたいに巻き付けて火にあぶって食べるんです。「パンってこうやって食べるとおいしいんだ!」という子ども達の表情も最高でしたし、外で自分が作った料理を食べるということで、子どもたちもものすごく喜ぶんですよね。あとは、サバイバルキャンプですね。学校に泊まり、地元の消防署などに協力いただきながら、いざという時のサバイバル術を学ぶ催しなのですが、このイベントの夜のお楽しみが、子どもたちへの怪談話。部屋中に黒いカーテンをしきつめて真っ暗闇をつくり、読み聞かせのプロに読んでもらってすごく盛り上がりました。準備する大人が本気で取り組まないと楽しくないので、とことんまでこだわりました。

(写真:小学校で読み聞かせをする石坂さん)

安藤: 素晴らしいですね。「おやじの会」では、お母さん達に対しては、何かされているのですか?

石坂:「おやじの会」は基本土日なので、家族の理解がないと活動できないんです。会として大事にしていることのひとつが、「家族満足度を上げる」ということなのですが、その目的を果たすため、年に数回、メンバーのおやじ達がホスト役として、ママ達を招待してパーティを開く「奥様に感謝する会」を開いています。普段が大変なママ達はずっと座っているだけで、ママトークに盛り上がってもらい。僕らおやじたちが、ママ達にかいがいしく料理や飲み物を運び、食べたり飲んだりしてもらう会で、毎回大好評ですよ。このような交流から、おやじの会のメンバーをご主人に持つママ達が会の活動を手伝ってくれたり、最近では、おやじの会のメンバーを父親に持つ子ども達による、「おやじチルドレン」も生まれ、主催者側に回って、おやじたちをサポートしてくれたりしています。

安藤: 「ママに感謝する会」は、僕らもよくやりますね。子どものすこやかな育ちには、何と言ってもママが笑顔でいることがいちばんですから。ところで、このような素晴らしい発想は、誰かのアイディアなのですか?最初からすんなりできていたわけではないですよね。

石坂: もちろんです。「おやじの会」の先輩たちが実践しているのを見たり、先輩たちから「これが大事なんだ」って直接教わったりして、「なるほど」って。それがずっと受け継がれていく感じです。

安藤: それこそがまさに、「地域内イクボス」なんです。

石坂: そうですね。僕は家族を持って始めて世田谷に住み始めたんです。もともと“アウェイ”な地だったのですが、「おやじの会」や子どもの学校行事に参加したりしているうちに、地域の知り合いがものすごく増えまして。今や“ホーム”です。

「プライベートを大事にしながら、いい仕事をして成果も出す」という“理想”を目指し続けたい

安藤: 若い頃は、地域なんか見えていなっかと思いますが??

石坂: そうですね。でも、基本的に人が好きで、地域の商店街の人たちといつの間にか仲良くなるタイプの人間なんです。妻からも、「昔からここに住んでいたみたいね」とよくいわれます(笑)。
「おやじの会」に加えて、子どもたちの学校に出向いて読み聞かせもやっています。当社は時間休がとれるので、その日は朝の1~2時間、時間休をとって子どもの学校に行き、本を読んでから出社しています。僕自身、もともと本が大好きなので、読む日の数週間前から絵本の専門店やお気に入りの本屋さんに足を運び、読む本を選ぶところから楽しんでいます。

安藤: 僕はいつも当日朝に決めますよ(笑)。

石坂: 読み聞かせを始めて気づいたのは、「子ども達にこんな風に情報発信させてもらえる機会をもらえるって、すごいことだな」ということです。それ以来、自分が読みたい本だけではなく、「人はどうして生きるのか」「戦争はなぜ悲しいのか」といったメッセージ性のある本を読んだ後、自分なりの解釈をこめて話をさせてもらったりするようにもなりました。このような時間を通して子どもたちと交流を重ねるうちに、子どもの名前も顔も、だんだんわかってくるんです。それで、読み聞かせの後で「○○くんはどう思う?」なんて聞いてみたり、とても充実した時間を過ごさせてもらっています。面白いテーマの絵本を読んで、いい反応をもらえた時は最高ですね。先日、6年生たちに『おなら』の本を読んだら大受けでした(笑)。

石坂さんの最近のお気に入り絵本『おならをならしたい』

安藤: いいですね。そっち系の本って、ママ達はあまり読まないですもんね。「お父さんが読み聞かせに来ると、お母さんが普通は読まない絵本を読むから、それがすごくいいですね」と、先生たちからおっしゃっていただいたこともあります。

石坂さんの、イクメンぶり、地域内イクボスぶりがよくわかりました。さてここからは、会社でのイクボスぶりについてお伺いしていきます。家庭や地域と積極的に、楽しく向き合っている石坂さんですが、今までお話されてきたようなご自身のプライベートのことを、会社の部下には言わないのですか?

石坂: あまり言わないですね。さしで飲みに行ったりする時には言うこともありますけど、なんというか、照れるんですよ。

安藤: 子育てに悩んでいるような部下はいないのですか?

石坂: それが、うちの部署は、いい感じのイクメンやイクママが多いんですよ。

安藤: やはり、石坂さんの生き方が部署内に浸透しているのですね。

石坂: それはどうかわからないのですが、うちの部署には僕以上にすごいパパ社員がいますよ。子どもが野球を始めたことをきっかけに、自身もコーチやったり審判の資格をとったり。週末は練習や試合に参加してくるので、週明け会社に来るたびに日焼けして黒くなっていくんですよ。仕事ぶりも優秀で、生産性も高いんです。帰れるときにはちゃんと帰り、基本的にダラダラ残っていません。

安藤: ナイスな職場じゃないですか!ライフが充実している部下がたくさんいらっしゃるのですね。

石坂: そうですね。僕自身の「ライフ」をお話すると、子どもと一緒に阿波踊りをやっています。練習は毎週金曜日を中心に行っていて、仕事で行けないこともあるのですが、高円寺、下北沢、経堂、三軒茶屋など都内で年に10回くらい出演する機会があります。

安藤: 阿波踊りの練習の日には、残業を入れないのですね?

石坂: もちろん入れません。

安藤: スケジューラーなどに、「阿波踊りのため」とか書くのですか?

石坂: それはもう、さすがにはずかしいので、非公開です(笑)。僕は、組織の中では自然体を大事にしています。メンバーには「プライベートを大事にしながら、いい仕事をして、成果も出す」という理想が自然に伝わったらいいと思っています。なので、会社や仕事だけにならずに、「家庭も大事にするよ」という姿勢は、ずっと示し続けようと思っています。


つい先日も、平日の午後、妻の誕生日に、レストランで夫婦で食事をとりました。僕たち夫婦の間では、お互いの誕生日は休みをとり、レストランで食事をすると決めているんです。子どもたちが学校に行っている間に二人だけでゆっくりランチできるので、平日休みをとるほうが都合がいいんです。これを15年、続けていますね。

安藤: やるなあ。

石坂: 休みをとることについて言うと、若い頃、休みをとる時に上司から「理由を言いなさい」といわれるのがとてもイヤでした。休みをとるのは自然なことなのに、なぜ理由をいわないといけないのか納得できませんでした。自分自身がこのような思いを抱いてきたので、今僕は、メンバーとは、「自分の仕事が終わっていたら定時に帰ればいいし、休みも普通にとればいい」というスタンスで接しています。

安藤: なるほど。上司がそのような考え方だと、部下は休みがとりやすいですよね。

石坂: そうですね。時々、その日の午前中に「今日の午後休みます」というようなこともありますが、「家族の事情だな」など背景がすけてみえるので、それでいいかな、と。うちのメンバーの話ですが、子どもって、自分の具合が悪くなったりすると、最初に連絡をとる相手って普通、母親じゃないですか。子どもから、「体調悪いんだけど」などとSOSの電話が男親にもかかってくるんです。それだけ子どもに信頼されているということなんですよね。

安藤: やはり、石坂流がちゃんと行き届いてますね。

石坂: いや、たまたまそんなメンバーが集まったのかと。

肩書きでなく、お互いを「さん」づけで呼び合うことを徹底していきたい

安藤: 普通そんなことはないです。チームのムードの中で、「家庭を持ち出していいんだ」という安心感が中にあるからだと思います。それが石坂さんの、イクボス術なのです。

石坂: 会社やチームの中ではお互いを呼び合う時に、あえて役職名をつけず、「さん」づけを徹底することを意識しています。室長、部長はもちろん社長まで全部含めて「さん」づけで呼ぼうということです。当社はどちらかというと固い組織で、肩書きを大事にする面もあります。でも、上位の相手を肩書きつきで呼んだ途端、時として受け身になってしまう。「さん」づけで呼び合うことで、「フラットに、主体的に、働こう。」というメッセージを込めているつもりです。

安藤: ちなみに石坂さんは、ご家庭でも奥さんのことを家内なんていわないし、奥さんも「主人」っていわないですよね。

石坂: そうですね。妻は、僕の両親の前でだけは、まじめな呼び方をしますけど(笑)、いつもは愛称でよばれています。それも、周りの人が聞いたらふきだしそうなユニークな愛称で。妻からだけでなく、子どもたちや子どもの友達からも、その愛称でよばれることがあります(笑)。

安藤:(笑)面白いですね。そこまでくると、ある意味ラクですよね。子どもの友達にも、「このおじさんだれだっけ?」って言われるよりは、愛称でよばれるほうが全然イケていると思います。
先ほどの「さん」づけの話ですが、組織の中ではどのようにアプローチしようと思っていますか?

石坂: まずは自分のチームから始めました。また、会社で「働き方カイゼン」みたいなの取り組みがあったので、部署全体で「さん」づけで呼び合おうと提案しています。

安藤: 素晴らしい!

高橋(総務部 ダイバーシティ推進室長兼CSR推進室長):当社の牧社長も、就任のご挨拶のときに、ご自分のことを「さん」で呼んでほしいとお話しされていました。このような影響からか、全社的な雰囲気も、以前と比べると少しずつくだけてきていると思います。

(写真:高橋さん)

安藤: 石坂さんは、ムードメーカーなんですよね。部下からみると、石坂さんみたいなボスは人気が高いと思います。

石坂: どうでしょうね。少なくとも、子どもたちには大人気ですよ(笑)。

安藤: いやいや、これからのイクボスは、女性社員や子どもからも人気がない人でないとだめでしょう。

石坂: まあ、こんな感じなので、先ずは子どもたちの人気者からめざしていきたいですね(笑)。

安藤: それがかっこいいですよ。最後に、イクボスとしてのこれからのビジョンを教えてください。

石坂: 僕自身、たいしたことをしているつもりはなくて、これが自然だと思っているんです。自分の親もそうでしたから。僕は今、仕事も楽しくて、家庭も楽しいです。「人生の中で、仕事だけが輝いているのが幸せなのか」といったらそれは違うと思うし、いっぽうで、「家庭だけでいい」とも言い切れない。仕事も家庭も両方輝かせたいと思っていて、このような価値観を共有できるような、職場の雰囲気を作れる人になっていきたいですね。

安藤: なるほど。確かにそうですね。今は「バランスよく、自分らしく生きる」という時代ですしね。石坂さんの今後のますますのご活躍を期待しています。今日はありがとうございました!


(筆・長島ともこ)