[結果発表] 第二回イクボス充実度アンケート調査

【第30回】坂田隆史さん|(株)CROSS FM代表取締役 営業統括

[公開日] [最終更新日]2020/06/13

躊躇なく子育てできる環境を整えたい


今回のイクボスインタビューは、福岡県域のFMラジオ放送局である株式会社cross fm 代表取締役社長兼営業本部長・坂田隆史さんが登場。JR小倉駅前とベイサイドプレイス博多にスタジオを構える同ラジオ局は、ここ数年増収増益が続き、2016年4月に化粧品会社DHCの傘下となりました。「これからますます働きやすくなり、会社も成長する」と坂田社長は断言します。

社員みんなが、自然とお互いを助け合う

―社員の働き方については、話し合いで決めているのですか。

坂田:役員以外で男性10人、女性9人が働いています。既婚者や小さな子どもがいる家庭など、それぞれ事情が違いますので、働き方については、個人と話し合いながら決めています。

例えば、福岡から北九州本社のオフィスに通っている社員は子どもが2人いるので、できるだけ家族との時間を増やしてほしいと思い、新幹線通勤を全額補助しています。

育休から復帰したばかりの社員は、休暇前と同じ営業部にいます。復帰にあたっては、本人と話し合いのうえ、以前の仕事をすべて戻すことはしませんでした。現在は、後方支援など社内でできる仕事を中心に担当してもらっています。時短勤務なので、なるべく気を遣わずに早く帰りやすい雰囲気を作っています。彼女自身も、しっかり時間配分を考えて仕事をしています。

―産休などによって、他の社員に”しわ寄せ”はありませんでしたか?

坂田:誰かが休暇をとっても十分やっていける体制を作っていたので、「しわ寄せがいく」ということはありませんでした。彼女が育休をとっている間の仕事は、他の社員が協力しながら、上手に分担していたようです。

―社長が「そういう職場にしよう」と働きかけたのですか?

坂田:特に私が旗を振っているわけではありません。社員みんながそれぞれ考えて、自発的に取り組んでいます。

シングルマザーの社員が一人いるのですが、彼女の存在が、僕を含めて社員全員の意識を変えるきっかけになりました。一人で育てる大変さは、当人が何も言わなくても、ある程度分かるつもりです。

子どもがいる社員は、ときどき会社に子連れで遊びにくることもあります。そんな時は、みんなで楽しく囲んでいますね。まるで自分の子どものようにかわいがっていますよ。

仕事にはメリハリが必要

―子育て以外に、介護などで帰宅時間が早い社員はいますか?

坂田:今のところはおりません。ですが、私が帰るときにまだ残っている社員に対しては、「早く帰りなさい」と声を掛けています。
仕事には波があります。イベント前などはとても忙しいので遅くまでやらないといけませんが、そうでなければ無理して残業する必要はないと思っています。

―社長が率先して、そうした声掛けをしてくれる会社は少ないように思います。

坂田:やはり、メリハリが必要です。やらなければいけないときに集中するからこそ、効率も上がると考えています。

―社員の年齢層は?

坂田:一番下は、昨年新卒で入ってきた23歳、平均は43歳くらいでしょうか。比較的高いですね。ずっと中途採用で即戦力を求めてきましたから、若いときから育ててきた人がいなかったんです。これからは長いビジョンで考え、定期的に新卒採用をしていく計画です。

10月から全体会議は月1回 長くて1時間のみ。チームミーティングをまめに行い情報共有を。

―ラジオ局の業務内容を教えてください。

坂田:ラジオ局というと、マイクの前に座って喋る人やディレクターなど、”番組を作る”仕事をイメージされるでしょう。それだけではなく、営業や管理など裏方の仕事もあります。

どの部署でも女性が活躍していますね。放送局の営業には男性が多いのですが、近年女性が増えてきています。当社の営業拠点は東京、北九州本社、福岡にありますが、福岡と本社に女性の営業がいます。
10月からは新しい組織体制がスタートしました。どういう組織にしようか思案していると、あの人はこんな仕事したがっていたなぁとか、一人一人の顔が浮かぶんですよ。でも、すべて叶えていたらきりがない。そこが一番難しいですね。

―異動に関して、個人と話すのですか?

坂田:年に2回、大きな面接をしています。会社への不満や、こういうことをやりたいという意見はそこで吸い上げるようにしています。家庭環境の話をしてくれる人もいます。人事を考える上でも、結婚や子どものことなどを話してくれた方が嬉しいですね。その時だけ突然話せと言っても無理なので、普段からの関係性も大切にしています。

―働きやすい組織を作ることによって、利益が下がるのでは?という経営者もいます。

坂田:今度の組織改革では、2人1チームで仕事をカバーし合えるように考えました。そうすれば、今までよりさらに効率がよくなり、無理をしないで新しい仕事に挑戦できるようになります。これは、業績を上げるための仕組みづくりでもあるのです。そのための種まきを、今頑張っているところです。

”自分の子ども”でいてくれるのは10歳まで 意識して子どもとの時間を作った

―社長はサーフィンが趣味だと伺いましたが、そのような趣味が企業経営や仕事に活きることはありますか?

坂田:生活のメリハリがつきますね。仕事では、ベストパフォーマンスが求められますので、意識的に体を動かして、コンディションを保っています。一番怖いのは、無茶をして各所に迷惑を掛けることですから。
おかげでスケジューリングが上手になり、仕事の効率も上がりました。自然の相手をしていると、割り切りも早いんですよ。今日の波はいいとか、これはダメだから止めておこうとか。

―その大好きな趣味も、育児期間はあまりしなかったそうですね。

坂田:30代は、ほとんど海に出掛けませんでした。私には子どもが2人おりますが、ある方が「自分の子どもが”自分の子ども”であるのは10歳までだ」と話されたのを鮮烈に覚えていまして。10歳を越えたら一人の人間として接する、と。

―30~40代の男性は、仕事が忙しくて家庭での時間が取れない人が圧倒的に多い。ある統計によると、小学生が父親と平日過ごす時間は「0分」が1位だそうです。

坂田:私も30~40代は、まったくその通りの生活でした。仕事ばかりで、家族と触れ合う時間を取れなくても仕方がないとも思っていました。ですから、せめて休日は子どもとの時間を作らないといけないなと、その話を聞いて思いました。
帰りが遅いうえに土日は趣味、なんていったら怒られますよね。どうしても仕事をしていると、生活時間が小さい子どもと合いません。ですから、自分の生活サイクルの中から、精一杯子どもと接する時間を作り出すようにしました。

結局、何を優先するか、ということではないでしょうか。
時間というのは、一番みんなに平等なものだと思うんです。1日26時間ある人はいない。時間を捻出できるかは、その人の努力次第です。そして僕の場合は、優先順位が「子どもとの時間」だったんです。

でも今の社員たちに、その頃の私のような生活を強いたくはありません。先ほども少し触れましたが、できるだけ、家族との時間を作ってほしいという気持ちがあります。

私たちの仕事は、モノを1000個作ったら終わり、というものではありません。営業は、積み上げるもの。上限がないのです。そこがまた面白い。自分の裁量で仕事量を決めていけるのですから。ただしリミットがないので、自己管理が大切なんです。

「子どもと向き合う覚悟」を後押し

―坂田社長が大切にしているワーク・ライフ・バランスのポイントは何でしょう?

坂田:プライベートを充実させる、そしてそれを口に出す、ことです。

―「イクボス10カ条」の中で、特に心掛けているものがあれば教えてください。

坂田:「理解」「配慮」「隗より始めよ」ですね。自分自身、休むべき時は休む、ということを大切にしています。
いかんせん、まだまだ小さい会社なので、個人の負担は大きくなっています。ですが、今年親会社が決まり、手厚いサイドサポートができる体制に整いつつあります。そうなれば、もっと働きやすくなるのではないかと思っています。親会社にも、支援をしてほしい内容を具体的に伝えています。
会長には、「親会社からこういう支援が必要です」という進言もしています。

―最後に、今後の目指すところを教えてください。

坂田:社員が躊躇なく子育てできる環境を作っていきたいですね。
昭和の時代は、おじいちゃんおばあちゃんから近所の人までが一つのコミュニティを形成していました。それが今は難しくなってしまいました。子育てをするには大変なことも多い社会環境ですが、やはり親が一番に子どもと向き合うというのが基本だと思います。会社は、その「向き合う覚悟」ができるよう、しっかりサポートしたいと思っています。

スタジオ前で九州イクボスプロジェクトメンバーと記念撮影
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坂田社長、ありがとうございました。

オフィスフロアには、マッサージチェアがいくつもあり、みなさん良い意味でリラックスして仕事をされているなと感じました。社員のプライベートを支える仕組みが、仕事に対するモチベーションを底上げしているのではないでしょうか。cross fmのさらなる展開に注目です。

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