9/16(金)、福岡市内にて公開講座「イクボスが日本を変える 〜女性社員を活かすこれからの中小企業経営〜」が開催されました(主催:福岡県および福岡県女性財団)。
前半の基調講演では、Jリーグ退会という最悪の事態を乗り越え、現在5年ぶりにJ1のステージで奮闘するアビスパ福岡の社長である川森敬史さんから、女性を活かす経営についてお話しいただきました。
後半は、川森社長に加え拓新産業代表取締役の藤河次宏さんをパネリストにお迎えしてのパネルディスカッション。コーディネーターは、日本全国でイクボスのムーブメントをおこしている川島高之さんがつとめました。
会場はほぼ満席、おおいに盛り上がった当日の様子をダイジェストで振り返ります。
基調講演
- テーマ:「女性活躍が支えた、アビスパ福岡のJ1復帰」
- 登壇者:アビスパ福岡株式会社 代表取締役社長 川森敬史さん
<要点まとめ>
- 営業を強化しアビスパのスポンサーが1年で5倍の1010社になった結果、営業支援の業務も激増。それを解決したのが子育て世代の業務限定社員。
- 新人には教育が必要だが、子育て世代の主婦は過去正社員経験のある方が多く、即戦力に。社長自ら対話を行うことで業務改善提案もたくさん出てくる。
- 女性活躍の秘訣は「傾聴」。コミュニケーションを図ることでたくさんアイデアが出てくる。これからの経営者は固定観念を捨てなければならない。若手もガツガツ働く世代ではない。女性は権力に迎合しない側面もあり、企業経営を健全にすることに役立てることができる。
- 女性社員が増えたことで男性社員も活性化し、社内が整頓されおもてなしが充実するなどプラス効果もたくさんあった。
特別講演
パネルディスカッションの前に、”元祖イクボス” 川島さんによるイクボス講演。みずからイクボスとして社員満足度を高め、同時に会社の業績を向上させた経験をふまえて、イクボスが求められる背景やそのメリット、イクボス10カ条についてお話いただきました。
パネルディスカッション
- テーマ:「人材を最大限活かす経営力アップの秘訣とは」
- 登壇者:
アビスパ福岡(株) 代表取締役社長 川森敬史さん
拓新産業(株) 代表取締役 藤河次宏さん
NPO法人コヂカラ・ニッポン 代表 川島高之さん
<要点まとめ>
(拓新産業 藤河社長)- 経営転換のきっかけは、リクルートの際に学生が集まらず苦労したこと。優秀な学生の確保は中小企業共通の悩み。現在は3名程度の求人に200名程度の応募がある。リクナビなどは使っていない。
- 30年前から従業員の有給完全消化、残業ゼロ、休日出勤なしに取り組み、連続黒字経営を実現。ここ数年は過去最高益を更新。
- 女性の育休取得者が出た場合には、全社員に理解を求めるよう周知徹底している。
- 幹部からは顧客満足をどうするのか、若手からはこの働き方でちゃんと評価されるのかという反発もないことはなかった。これに対し、顧客を徹底して分散し理解を求め、どうしても営業姿勢に理解を得られない場合には取引しないこととした。
- 同時に徹底したコスト削減にも取り組んでいる。交際費や挨拶状等は廃止し、それ以外の本業でどうやって顧客にま満足してもらうかを追求する。
- 男性経営者へのメッセージは、どれだけ刻々と変わる育児休業などの制度を理解しているかを問いたい。まず自ら勉強し、部下と向き合うこと。
- 女性活躍のポイントとして、女性は潔癖なところもあるので、とにかく労働環境など設定したルールを守ること。そうすればその分成果で返ってくる。
(アビスパ福岡 川森社長)
- 女性に活躍してもらおうと思ったきっかけは、もともとアパマンショップ時代にさかのぼる。内勤システム業務について、主婦の方々の方が早いのでは?という議論があり募集。すると主婦の都合に会社が合わせたら応募がわんさかきた。それを体感したのがきっかけ。
- 女性に活躍してもらうために気をつけていることはとにかく話を聞くこと。男性は結論から聞きたいが、女性は違う。
- 業務限定社員のシフト組みは大変だった。具体的に、社長みずから現場と管理職のギャップをつなぐ作業をしていった。
- 現在の人事の仕組みは雇用上、有利。求人にお金かけなくても応募が来る。
- 男性経営者へのメッセージは、まず男性経営者は固定概念にとらわれないことが大事。女性活躍は経営戦略のひとつ。経営環境の変化のなかで柔軟に対応できなくなってく、いまの問題に対してトライしていくのが経営者にとっては大事。
- 女性の方に対しては、場を得たら自己を表現してほしい。権力に迎合しないのでそれを発揮してほしい。当社であればクラブの価値を上げること。特性をもった女性社員がいきいき働くことで、企業価値があがっていくと思う。
参加者の所感・コメント
当日参加された方々からのコメントを一部紹介します。- アビスパ再建の立役者が、子育て世代の業務限定社員であることに正直驚きでした。自社の人材登用のあり方を見直したいです。
- 日ごろから業務改善提案が社員から出てこないことを課題ととらえていたが、川森社長のように社長自ら対話を行うことが重要だと気付かされた。
- いかに経営者として固定観念に縛られていたのか思い知らされました。イクボスを実践するとともに、女性に活躍してもらうような仕組みと環境を作っていきたいと思う。
- 女性社員が増えたことで男性社員も活性化し社内が整頓されおもてなしが充実するなどプラス効果もたくさんあった。
- 藤河社長のお話は目からウロコが落ちてばかりでした。何事もいかなとるきも「周知徹底」。これに尽きますね。
さいごに
今回の講座は、福岡県および福岡県女性財団が主催ということで、九州イクボスプロジェクトのメンバーも協力団体として企画段階から携わり、多方面の方々からご支援をいただきながら無事開催にいたりました。関係者の皆様、ありがとうございました。九州ひいては日本の働き方を変えるべく、引き続きイクボスの推進活動を継続していきます。
(登壇者および、この日「イクボス宣言書」に署名をされたボスの方々との記念撮影)