[結果発表] 第二回イクボス充実度アンケート調査

【第32回】西村正樹さん&緒方絵美さん(株式会社渕上ファインズ【Dress the Life】)

[公開日] [最終更新日]2020/06/13


【インタビュー】西村正樹さん・緒方絵美さん|(株) 渕上ファインズ【Dress the Life】
2016年11月、新たにイクボス企業同盟に加入された、株式会社渕上ファインズ【Dress the Life】。1895年に呉服屋として福岡市で創業した同社は、次第に規模を拡大。現在は福岡を飛び出し、全国展開するブライダルドレスショップとして、大きく成長を遂げています。

今回は、ヒューマンリソースおよびITビジネスソリューションズマネージャーの西村正樹さんがイクボスインタビューに登場。全社員の9割が女性という環境の中、社員が働きやすい制度改革に日々奔走しています。

また、同社では2014年に、ママ社員を支える「MAMA THE LIFE」(ママザライフ)制度が誕生。妊娠中のタクシー出社補助、病児保育費の会社負担、子どもの誕生日や記念日に取れる休暇、ママサークルなど、さまざまな取り組みをされています。同プロジェクトの中心メンバーである緒方絵美さんにも、お話を伺いました。

自分自身が子育て中 だからこそ必要な制度が分かる

―勤務されて何年目ですか?

【インタビュー】西村正樹さん・緒方絵美さん|(株) 渕上ファインズ【Dress the Life】西村:2011年に入社し、6年目に入りました。以前はIT企業でSEをしていましたが、30歳を過ぎたころ、ビジネスをITで支える仕事に取り組みたいと思い、転職しました。現在は情報システムの責任者のほか、人事やマーケティングにも携わっています。経営側のことをしてみたいと思っていたので、希望通りの仕事です。

―西村さんのチーム編成を教えてください。

西村:部下が19人で、そのうち16人が女性です。男性は30代後半、女性は25歳から38歳までと、比較的若いチームです。そのうち6人が子育て中です。

今、子育て世代が増えてきているところなのです。私自身も、5歳と3歳の男の子がいます。子育てと仕事の両立に関する悩みは、みんなと一緒ですね。だから、彼らが必要とする制度が分かるのだと思います。

会社の平均年齢も29.8歳と若く、4、50代があまりいないのが特徴です。人口減少や結婚式自体を行わない人が増えている中、今までのビジネスモデルだけでは厳しい面があります。だからこそ、新しいアイディアを出せる若い感性を大切にしています。
社内の年齢層を見ても、これからますます、多様な働き方へのニーズは高まるでしょう。優秀な人材に活躍してもらうために、会社のサポートは必要不可欠です。

―部下のライフスタイルに合わせた働き方を推奨されていると伺いました。

【インタビュー】西村正樹さん・緒方絵美さん|(株) 渕上ファインズ【Dress the Life】西村:ブライダル関係は土日祝日が最も忙しいのですが、保育園に預けられる時間に合わせて、対象のお子さんがいるスタッフのシフトを調整しています。発熱でお迎えが必要なときの早退や、看病での有休もとりやすいようにしていますが、どうしても出勤が必要な時に備えて、病児保育代を会社が負担する制度も整えています。

早退や欠勤で混乱が生じないように、少なくとも2人で1つの仕事を共有するようにしました。すると、引継ぎがスムーズに行え、1人がいなくても、もう1人がきちんとカバーできるようになりました。女性は責任感が強く、一人で抱え込むことも多いように思いますが、2人1組だとすぐに相談できるというメリットもあります。

また、独自のシステムやgoogleを使って仕事をクラウド化し、自宅でも作業ができるようにしました。このあたりは、元SEの強みですね。

育休中の人にも、仕事を任せられるようにするため、現在システムを構築しているところです。やはり仕事から長く離れていると不安でしょう? 会社としてもベテランの経験が埋もれているのはもったいないので、来年の1月あたりから制度化して実施しようと思っています。

人材は”人財” 上司に熱く訴えた

―職場改革は簡単ではなかったでしょう。失敗はありましたか?

西村:始めのうちは一人で突っ走ってしまい、経営陣と衝突してしまいました。例えば、地域限定勤務や在宅勤務など社内全体に影響が出そうなものでも、まずは導入してみようと考えてしまい、「それで本当に、社員にも会社にもメリットがあるのか。制度導入そのものが目的になっていないか」と問われました。

そもそも、当初は働くママを増やすこと自体に少し懐疑的な風土でした。5年前までは結婚や妊娠で辞めている人がほとんどでしたし、社内にも「辞めるんだったら引き止めない」「独身の方が転勤などもしやすい」という意識がありました。しかし、離職率が高いままの状態が続き、社員の採用や教育にかなりコストがかかる上、お客様やパートナー様にご迷惑をお掛けしてしまうことも少なくありませんでした。そのため、社員一人ひとりが長く働ける環境こそが、すべてにおいてベストだと思うようになったのです。

人材は、”人財”です。ベテラン社員が次々と辞め、危機的状況が見えてきて、ようやく「これは大きな損失だ」と気付くことができました。新卒採用も厳しく、このままでは良い人材が集まらず市場で戦えない、生き残れないと、経営陣と人事チームで議論しました。また、社長、副社長と、外部のコンサルティング会社を交え、1年ほどかけて人事制度を構築しました。それも、会社の風土が変化するきっかけになったようです。

―会社全体の意識が変わったのですね。

西村:変わり続けることを求める社風も、功を奏したのだと思います。当社では、チャレンジは責められません。むしろ、何もアクションを起こさず、”今まで通り”を続けていると問題視されます。

―イクボス10か条の中で、特に心掛けている項目はありますか?

【インタビュー】西村正樹さん・緒方絵美さん|(株) 渕上ファインズ【Dress the Life】西村:「ダイバーシティ」は、特に意識しています。社員は、それぞれ立場も求めるものも違う。ご主人の休みが平日しかとれない、実家が遠いから近くに頼れる人がいないなど、いろんな環境があるので、個人に適した接し方や提案をするようにしています。

自分が子育て中だというメリットは大きいですね。子どもが生まれて、初めて、こんなに苦労するんだ、と衝撃を受けました。出勤前、子どもたちを幼稚園に送ることがありますが、それだけで倒れそうになります。これを毎日している母親はすごいなと、身をもって感じています。だからこそ、「提言」できるのです。直属の上司である副社長は懐が深く、部下の意見にきちんと耳を傾けてくれます。大きな器で受け止めてくれるので、心強いです。

もう一つ、「業務改善」も日々行っています。部下たちには、忙しいから誰かにやってもらおう、ではなく、きちんと仕事を”改善”した後に引き継ぐよう指導しています。その際はトップダウンではなく、私も一緒に策を練るようにしています。

―「隗より始めよ」はいかがでしょうか。

西村:帰る時間を早くしたり、休みはきちんととるようにしています。休日は、家族と一緒に出掛けて、おもちゃ屋さんに行ってご飯を食べてぐったり…ということが多いですね。つい最近まで土日も出勤していましたが、上司から注意されました。少し仕事に偏りすぎていたかな、と反省しています。

趣味は、カメラ片手の一人旅。今の夢は、息子たちと3人で、やんちゃな男旅をすることですね。

―最後に、これからの目標を教えてください。

西村:当社でも、今後ますますママが増えていくことでしょう。彼女たちが安心して活躍できる場にする、そうすることで独身の人も働きやすくなる、という仕組みづくりをしていきたいと思います。

思いがけずワーキングマザーに

【インタビュー】西村正樹さん・緒方絵美さん|(株) 渕上ファインズ【Dress the Life】
―緒方さんは転職されたと伺いましたが、前職と比べて働き方や考え方は変わりましたか?

緒方:私は航空業界を結婚退職し、福岡に移住しました。母が専業主婦だったので、子どもができたら仕事は辞めようと思っていましたし、当社に入社したときも”腰掛け”のつもりでした。

―お子さんが生まれた後も仕事を続けられているのはなぜですか?

緒方:本当に、仕事が楽しいからです。以前は誰でも知っている大企業にいたため、私は会社の歯車の一つだと感じていました。やりがいはそれなりにありましたが、私がいなくても会社は成り立つと思い、3年で満足してしまったのです。

でも、こちらでは、自分が会社を動かしている、仕事を任せてもらえるという実感があります。社長から「ずっとこの会社にいて欲しい」と言われたときに、ようやく私の存在価値を見出せたような気がしました。必要とされ続けたいですし、新人で入ってくる人たちには負けられないと思っています。

―子育てと仕事の両立はできていますか?

【インタビュー】西村正樹さん・緒方絵美さん|(株) 渕上ファインズ【Dress the Life】緒方:育休から復帰直後は大変でした。負けず嫌いで、一人で抱え込んでしまうタイプなので、一時期は仕事と家庭のバランスが崩れそうになり、仕事を制限しようと思っていました。そんなとき、マネージャーにならないかと、声を掛けていただいたのです。とても意外でしたし、正直迷いました。けれど、ここで私が逃げてしまったら、いずれ後輩が同じ壁にぶつかったとき、進むべき道を作ってあげられないと思い、決心しました。

昇格後は、仕事に使える時間が少ない分、マネジメントで結果を出すというスタイルに変えました。部下に任せつつ、足りないところをフォローしています。

出張の回数もできるだけ減らしていますが、どうしても必要なときは行きます。希望すれば子どもを連れて行くこともできるので、とても助かっています。子どもも私の仕事を理解して、協力してくれます。いずれは、「ママザライフ」で子どもたちの職場見学をしてみたいですね。

―「ママザライフ」を提案したきっかけは?

緒方:ママでも、いろんなことを制限せずに働ける環境を整えたかったのです。働いてくれた方が、会社も助かりますから。ただ、「ママになったから残業できない、早退も当たり前」とは思ってほしくないので、社員の意識改革も同時に進めています。何のためにこの制度があるのかを、社員にはきちんと知ってほしいと思っています。

―ありがとうございました。




「ママザライフ」主催の「ママ会」には、時折り経営陣も参加。そこで、ママ社員の実情を知り、ときには新しい事業のアイディアが生まれることもあるそうです。
多様な働き方を応援する同社は、これから制度を整えたい企業のロールモデルとしても最適でしょう。育休中の社員活用など、今後の展開にも期待が高まります。

<企業情報>
  • 企業名:株式会社渕上ファインズ【Dress the Life】
  • 本社所在地:福岡県福岡市博多区
  • URL:http://www.ffines.jp/