雇用の仕組みの多様化がこれからの日本企業の生命線に
今回のイクボスインタビューはスリー・アールシステム株式会社代表取締役社長の今村陽一さんと総務部課長代理の明瀬正吾さんが登場。
2001年5月に設立された同社は、自社工場を持たず、他社へ生産委託するファブレスメーカーとしてスマホ関連機器・PC周辺機器・光学機器などの開発・販売に取り組んでいます。これまで国内での販売実績を順調に伸ばし、世界の展示会への出展を積極的に行い、海外での展開を視野に動く、まさにグローバル企業です。
時短社員制度の導入目的は
優秀な人材を確保し、収益を上げるため
―ワークライフバランスや多様な働き方を取り入れるきっかけは何でしたか?今村:社員数が多くなってきたことです。働く人間が働きやすい、気持ちいい環境を作っていかないと、今後社員が増えていく企業体として存続できないかな、というところですね。常に起こりうるトラブルを想定し、未然防止できるように対策を打つというスタンスを心掛けています。
また、当社はアジアを代表するような会社を目指しています。そういう世界で通用する会社では、社員の働く環境づくりは当然できていて当たり前だと思うんです。組織が小さい今のうちに基礎になる仕組みをしっかり作る根回しをしておくことが大事です。大きくなってから変えようとしても収集がつかなくなりますから。
―時短社員制度を導入した、と伺いました。具体的には、どういった制度ですか?
今村:結婚して、出産して、産休を取って、復帰後はパートという働き方はよく聞きますが、当社では、復帰後もパートとしてではなく正社員で働くことができるようにしました。福利厚生はフルタイムの社員と同一です。賞与もフルタイムの社員と同一条件で、働いた時間分を支給します。同じ条件で能力を発揮してください、という感じですね。
時短社員制度は従業員の中から上がってきた声を制度化したものです。
―どうして時短社員制度を導入しようと思ったのですか?
今村:単純に、優秀な人材を確保したいから。そしてその人材に将来を約束するためです。労働人口の減少は今後避けられません。それに伴って、女性の雇用と外国人の雇用は積極的に取り組んでいきたいと思っています。特に女性の雇用に関しては早めに手を打っていくつもりです。
現在の日本の雇用環境では30代から40代の管理職男性が一番高く評価されています。ですが獲得の難しいそのような男性を求めなくても、能力・技術がある優秀な女性がたくさん眠っているぞ、ということに気が付いたんです。時短でしか働けない、という条件があるだけで働けずにいる優秀な人材がいるなら、その人材が働ける職場環境を整えればいいだけですよね。
時短でしか働けない優秀な方、皆さんスリーアールに来てください!
―時短社員制度って、思い切った制度ですよね。人件費が上がると、単純に会社の利益が下がってしまいます。人件費が膨らむことは怖くなかったのですか?
今村:それは大丈夫です。結果、そういう優秀な人材がいっぱい入った方が収益は上がるんですよ。女性の雇用は、これからの日本企業の生命線になると思うんです。女性が働きやすい環境を整えることにかかる経費は、投資です。収益にプラスで戻ってくるのだから。
利益追求と社会貢献というのは表裏一体なので、どっちをやる、ではなくて、どちらかをやればどちらもできているはずなんです。
「なぜなのか」を社長自らが説明
理念やビジョンを社員一人ひとりに浸透させる
―新しい制度を導入すると、反感を抱く人が出てきませんか?今村:まだ導入したばかりなのでまだ出ていませんが、今後出て来るでしょうね。そこは評価体制の問題になってくると思います。能力に応じた評価を追求していくための人事査定システムを作っていかないといけないですね。
それから、「なぜなのか」をみんなによく話します。
「こうやれ」じゃなくて「なぜこういうことを今やらなきゃいけないのか」を。
行動理由や動機付けをして、この制度を導入すると将来どうなるのか、どう何に役に立つのかを話すことがとても大事だと思います。
当社は今後、一気に事業を拡大していく予定なのですが、それに伴い社員の数もぐんと増えます。こういう時、理念がスカスカになることが懸念されます。だから今年はわたしが現場に入っていこうと思っています。
―これまで社長の考えを伺ってきましたが、それはどこから学んだのですか?
今村:本が多いですね。乱読します。考え方を切り替えるにはいくつか方法がありますが、本が一番コストがかかりません。1冊の本を読んで2,3個使ってみようと思うものがあれば十分ですよね。当社には図書室も作っています。社員にも本を読む人が増えてきました。正社員になればKindleも支給しますよ。
働き方をオーダーメイド
一人ひとりの発揮能力を最大限に
―時短社員制度のほかに導入予定の制度はありますか?今村:在宅勤務や委任契約も当然導入していく流れになると思います。空中分解はしない程度に。そうすると、会社の中枢で働く社員は、究極の知識労働者になっていくはずです。そうしたらもう、男性でも女性でも全く関係ありませんよね。
多様な人が成果を出せるようにするための仕組みを作るのは簡単ではないんですけどね。
枠をどこで作っていくか。あまり枠をがちっと決めてしまうと失敗しちゃいます。
明瀬:時短社員制度はオーダーメイドの考え方が近いです。本人と話し合いながら、一番能力を発揮できる時間帯に、その人に合わせた形で決めています。最低4時間以上勤務というところさえ押さえれば、あとは出勤時間も労働時間もカスタマイズできるということですね。
―どんな業務を担当する方が短時間勤務していますか?
明瀬:今は技術職が多いですね。デザイナーとか。クラウドを活用すれば事務職もできますよね。在宅勤務者のタイムカードなんかも会社で管理できるシステムを導入しています。
―最後に、イクボス十箇条の中で特に気を付けていることは何ですか?
今村:全体的に気を付けていますが…「理解」ですかね、状況の。その人それぞれが持っているバックボーンがあるし、どうにもならないことってあるじゃないですか。たとえば国籍とか、信仰とか、趣味、嗜好とか。本人がよし、とすることは、視野を広く持って理解しないといけないですよね。
それから、最後の「隗より始めよ」。私自身、子どもは4人いますし、ワークライフバランスは結構取れていると思います。人生を楽しんでいます。
明瀬:「提言」「有言実行」も、部下から見て社長が常に発信されている部分じゃないのかな、と思います。当社は「育児する人が能力を発揮して利益を上げる会社」というスタンスが強いですから。
今日はいろいろお話を伺えて非常に参考になりました。
ありがとうございました。
健全な企業運営をする上で最も必要な利益追求のために、男性も女性も関係なく、優秀な人材一人ひとりが最大限に能力を発揮できる環境を作る。そのぶれない軸が同社の強みとなり、大きな飛躍を目前に、用意周到なトラブル回避を可能にしているのでしょう。
世界に通用する企業として、今後の活躍と展開から目が離せません。
<企業情報>
- 企業名:スリー・アールシステム株式会社
- 本社所在地:福岡市博多区那珂
- URL: http://3rrr-hd.jp/