『イキマネ』とは、女性が「イキイキ」「活きる」マネジメントのこと。
組織の中で女性本来の良さが発揮できるマネジメントを目指すこの手法について、ハピレボプロデューサーであり、株式会社オフィスat 専務取締役の阿部博美氏による連載記事を配信します。
(※)このコラムでは、イクボスを推進するプロジェクトメンバーによる寄稿記事を配信しています(記事一覧)。
売上目標〇〇万円!
こういう数値目標を前にすると、多くの女性たちがげんなりします。
女性はどうしても体温の感じられない「数字」に思い入れができないのです。
そして数字の成果や目標達成という結果よりも、そのプロセスの中でお客様から感謝の言葉をもらう方が何倍もモチベーションが上がります。
「おいおい、そんな甘いこと言ってるんじゃないよ。仕事は結果が全てだろう」
と言いたくなりますか?
もちろん女性たちも、結果が大事ということは理解しています。
けれども、そこに至るプロセスがあってこそ結果がついてくるものだと思っているので、プロセスを無視して数字のことだけ言われると、とたんに気力が萎えるのです。
ここで気を付けないといけないのは、みんな売上必達という目指す頂上は同じであって、山の登り方が違っているだけということを理解することです。
ですから登り方にまであれこれ口を挟まずに見守ることです。
彼女たちのプロセスを見守り、こまごまとした気配りや頑張った努力に声をかけてあげることで、数字に対するモチベーションもキープすることができます。
「プロセスはどうでもいいんだよ!」などと言うのはやめましょう。
ひとつ分かりやすい事例をご紹介します。
資生堂には約1万人の美容部員がいます。その99%が女性です。
ある時、美容部員たちの売り上げノルマを撤廃しました。すると、営業利益が4.1%から8.8%へと改善したのです。
ノルマの廃止について、ある美容部員はこんな発言をしています。
「本当にきれいになってもらうための接客ができるようになりました」
「以前は売り場に立っても『あといくら売らないと』という思いが頭の隅から離れず、お客様にとって不要な商品をすすめてしまうこともありました」
数字に惑わされずお客様と真摯に向き合うことで、自然と売り上げも伸びて行ったのです。
「ノルマを廃止すると美容部員が怠ける」という批判も出ましたが、杞憂に終わっています。
彼女たちは怠けるどころか、お客様から感謝をもらうためにこれまで以上に努力したのです。
数字で脅さずとも、お客様の嬉しいを心から提供することで、数字もちゃんとついて来るのです。
もちろんノルマと連動していた評価基準も変えています。この場合は、お客様との接触時間(長い方が良)やお客様からのアンケートによる評価に変えています。
この時のトップはこう言っています。
「大切なのは、今日買わなくても『資生堂と一生付き合いたい』というお客さまを増やすことだ。目先のノルマより信頼が大切だ」と。
シェア争いの時代はとうに終わっていて、顧客といかに長く付き合うか、一人の人にどれだけ多く買ってもらうかという時代が続いています。
そんな時代にあって、この女性の感性はとても合っていると思いませんか?
私が若いころは、営業部の天井から「売上目標〇○〇万円!」「3ヶ月連続達成★」などという垂れ幕を下げて拳を突き上げていたこともありました。
もう歴史的遺産かもしれませんね。
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このコラムでは、組織の中で起きがちなミスコミュニケーションを軸に、様々なポイントやコツをお伝えします。ぜひ違いを知って、新しい視点を楽しんでみてください。
そして、女性たちが存分に能力を発揮でき頼もしい戦力となることで、力強い組織となるためのサポートとなればと思います。
<阿部博美・プロフィール>
株式会社オフィスat 専務取締役/ハピレボプロデューサー。産業カウンセラー、キャリアコンサルタント。
自称「女ゴコロ翻訳家」。男女の本能からくる意識や行動の違いを、様々な具体的場面に落とし込み、お互いの理解を深め相乗効果を上げることを目指す。企業活動の中では、女性客の本音を翻訳しマーケティング設計に繋げ、組織の中では、お互いの強みを活かし合える風土づくりに繋げている。
現在、女性目線を専門とするマーケティング会社を経営。商品やサービスについてはもちろん、近年は採用ブランディングや女性活躍推進の相談を多く受けている。それらの中で、女性社員や外部の主婦など、女性チームをマネジメントする場も多い。新卒から15年間携わった人材派遣業界での女性マネジメントや、派遣先企業と派遣スタッフとの間での翻訳経験が非常に役立っている。