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【第25回】川口 哲平さん(株式会社クラッソーネ 代表取締役社長)

[公開日] [最終更新日]2017/04/21


【インタビュー】川口 哲平さん|(株)クラッソーネ代表取締役社長
今回のインタビューは、株式会社クラッソーネ(本社:愛知県名古屋市)代表取締役の川口哲平さん。クラッソーネは創業4年目ながら本当の意味でワーク・ライフ・バランスを実践している企業で、川口さんが会社員時代に感じた疑問を実践に活かしている点など伺っていきます。

〈川口哲平さんプロフィール〉

愛知県生まれ。大手ハウスメーカーに入社し、注文住宅の営業を担当。入社6年目で最優秀営業賞を獲得し、その後に独立する。
「住宅業界を革新したい」という思いから全国1位の立場を捨て、2011年に株式会社クラッソーネを立ち上げる。「インターネット×暮らし」をキーワードにして、複数のマッチングサービスや提携企業の営業支援を行っている。

〈株式会社クラッソーネ〉

2011年創業。提供サービスは、解体業者のマッチングサービス「解体工事の匠」、外構業者のマッチングサービス「エクステリアの匠」、Webマガジン「くらそうね」など。クルー数、23名。
URL: http://www.crassone.co.jp/

聞き手:横井寿史(横井寿史社会保険労務士事務所所長、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事)

働く人に心からの幸せを

横井:まず、若くして起業された経緯をお聞かせください。

川口:新卒でハウスメーカーに就職して、営業をしていました。仕事をしていくと様々な矛盾点や無駄な部分が見えてきます。住宅業界のような多重下請け構造だと、エンドユーザーにその負担が重くのしかかります。そして数年勤めてみて、そうした部分を変えるために起業したいと思うようになりました。また、どこのハウスメーカーの営業もそうだと思うのですが、多くの人が長時間労働をしていました。毎日深夜まで仕事で、その後は家に帰って寝るだけ。子どもがいる先輩たちもいましたが、子どもとの時間はほとんど取れておらず、そうした働き方ってどうなんだろうと疑問を持ちました。

横井:それで経営理念の中に「働く人に心からの幸せを」があるわけですね。

川口:そうですね。ただ、こうした観点を持つようになったのは人を雇うようになってからです。一人でやっているうちは自分が儲かってのんびり暮らしていければそれで良いと思っていました。ただ、先ほどお話ししたように会社員時代は過酷な働き方でしたので、それを社員に強制するような会社にはしたくないと。お客様第一ではなく、自分自身を第一に考えて欲しいと思いました。

横井:それにしても、いわゆるベンチャー企業らしくない考えかたですよね。

川口:確かにベンチャー企業にしてはガツガツしていないと言われます(笑)。

横井:ところで最近社長自身が育児休業を取得されたそうですね。どれくらい取得されたんですか?

川口:第一子が3月に生まれまして、妻が里帰りから戻ってくるタイミングで1週間育児休業を取得しました。ただ、初っ端に私自身が風邪を引いてしまい・・・妻からは少し小言を言われました(笑)。

横井:それはまずい(笑)。

川口:でも部屋の片づけなどできましたし、私がいることで家事などはスムーズに進みました。子どもをあやしながらだと、家事もなかなか進みませんから。

横井:育児休業を取得されて、感じたことなどがあれば。

川口:やはり一週間育児休業を取得するだけではあまり意味がないと思いました。それよりも日常にどれだけのことがやれるかのことの方が大事だと。1週間だけではお手伝いにすらならない。

横井:その点すでに育児休業から復帰されているわけですが、家事などはやられているのですか?

川口:夜中のミルク、オムツ換え、掃除、お風呂、ゴミ出し、夕飯の片づけ、洗濯、洗濯槽内の掃除もします。また妻のマッサージもやります。

横井:それは素晴らしい!まさにイクメンですね。でもそれだけのことをやろうと思うと、時間が必要ですよね。普段は何時くらいに帰宅されるんですか?

川口:19時から19時半には帰宅しています。

横井:社長自身が残業しないということですね。

残業したい者も原則残業は禁止

【インタビュー】川口 哲平さん|(株)クラッソーネ代表取締役社長
横井:さて、今度は会社のことについてお聞きします。まず、御社では従業員のことをクルーと呼ばれるそうですね。その辺りの意図はなんでしょうか?

川口:業務に追われる人ではなく、同じ志を持って船に乗り込んだ同士、という意味合いがあります。

横井:なるほど。お互いに単に雇う人、雇われる人という関係ではないということですね。次に特徴的な制度等があれば教えてください。

川口:パートナーキッズ休暇というものがあります。配偶者や交際相手、また子どもの誕生日には半ば強制的に有給休暇を取得してもらっています。

横井:交際相手も良いというのが面白いですね。

川口:はい。認めるのは一人までですけど(笑)。他には本人の誕生日に、本人のお母様、もしくはお父様などに手紙を添えてお花を送っています。
また、会社のクレド、就業規則など規程類はすべてホームページで公開しています。入社してから話が違ったなどのミスマッチを防ぐためです。また、公開しているということはクルーたちにとっても気兼ねなく就業規則等を閲覧することができるわけで、クルーたちの安心感にもつながっていると思います。

横井:先ほどの社長の帰宅時間もなかなか早かったですが、クルーの残業時間はどれくらいなんでしょうか?

川口:月平均4.25時間です。一日あたり15分程度です。

横井:15分!それは短いですね!しかし、建設会社とエンドユーザーの間を取り持つような仕事の内容だと、定時(定時は18時)後に問い合わせが来てしまうのではありませんか?

川口:基本的に18時以降に電話がかかってきても自動アナウンスを流して受けない仕組みになっています。また、創業時からそのような対応の仕方をしているので、取引先もすべて納得してくれています。

横井:しかし、新規の顧客など取りこぼしてしまうこともあるのではないですか?

川口:それもあるかもしれません。しかし、現状ではクルーの働き方を悪化させてまで対応すべきとは考えていません。一方で、ソフトウェアなどを駆使して良い方法がないかは常に模索しており、より良い方法が見つかれば顧客サービスは向上させていきたいと考えています。

横井:残業を削減しようとすると一部の残業したいクルーが反発してくるということを他の企業事例などでよく聞くのですが、そのあたりはいかがですか?

川口:とにかく当社では残業したい者にも残業は禁止と言っています。一人でも残業していると付き合い残業をする者が出てくる。それが先輩ならなおさら。お客様や業者様対応のように納期が有る仕事での残業は認めていますが、それ以外の残業は本人の希望では認めません。その代りというわけではありませんが、勉強会等への参加は奨励しています。また、子育て世代も多いのでほとんどの人が残業をしません。そもそもクルーを初めて雇うときからそうした方針でやってきたことも大きいと思います。子どもが病気のときなどの早退や欠勤も気兼ねなくすることができます。

横井:子どものいないクルーから不満などは出ませんか?

川口:それは私の耳に入ってこないだけで、おそらく全くないとは言えませんね。ただ、そうした不満は仕事が回っていないと出てくるものです。早退にしろ欠勤にしろ人が急に減ってしまっても仕事が回る環境を常に作っていく必要があると思っています。そして利益を出して、金銭面でもきちんと報いていくことが、全クルーの満足につながっていくと思っています。

横井:そのために必要なことはなんでしょう?

川口:二つあると思っています。一つ目は、業務を効率化して生産性を高めること。具体的には顧客管理システムの構築です。非効率な業務の多くはシステムで解決できると感じています。以前はいくつものファイルを開いて確認していた作業が、電話番号からすべての情報が端末に表示されるような仕組みを導入しました。そうして空いた時間を新規事業に当てていくことができれば、常にイノベーションを起こしていくことができます。
二点目は、ストック型のビジネスモデルの構築です。こちらはまだ具体的には取り組めていませんが、会員制サービスなどほぼ自動的に収益を上げられる仕組みを取り入れることで収益性を高めるべきだと考えています。

のびのびと働ける風土にしていきたい

【インタビュー】川口 哲平さん|(株)クラッソーネ代表取締役社長
横井:生産性が上がっていくことは単純に企業にとって有益だと思うのですが、そのほかにメリットなどありますか?

川口:ゆとりを持って働けることで、会社の雰囲気は向上します。前職では仕事に疲れている人が多かったのですが、当社では明るくモチベーションが高いクルーが多いです。今後、改善の取り組みが進んでいけば、このような特徴はより顕著になってくると思います。そして、良い雰囲気はやがて企業文化となり、対外的なアピール材料にもなります。
世間的に人手不足の現在は、こうした企業文化が強みです。特にリクルートという点では、クルーが知人を紹介してくれるわけです。自分がいやいや働いているところに知人は紹介しないでしょうから。

横井:まさに働きやすい職場を作ってこられたわけですが、最後に今後の展望等をお聞かせください。

川口:まずは、より良い風土の構築です。様々な分野の改善を組み合わせることで完全な残業ゼロ状態を作り出して、皆がいっそうのびのびと働ける風土にしていきたいです。
もう一つは規模の拡大です。クルーに対しても、社会に対しても良いことをしていると胸を張って言えますが、まだまだ社会に与えるインパクトは小さいと思っています。大手企業が「当社は残業は一切ありません」と言うのと中小零細企業が同じことを言うのとでは大きく意味が異なります。今後はより事業を発展させていって、働き方についても住宅業界の在り方についても、社会に対して大きなインパクトを与えられるような企業になっていけたらなと考えています。

横井:制度ありきではなく、働きやすい環境を作るために企業文化を作られてこられた川口社長、貴重なお話しどうもありがとうございました。

 


川添 祐樹
川添 祐樹
イクボスドットコム編集長
NPO法人ファザーリング・ジャパン会員