[結果発表] 第二回イクボス充実度アンケート調査

【第31回】渡辺年紹さん|(株)コスモス 取締役執行役員

[公開日] [最終更新日]2020/06/13

誰もが働きやすい住宅メーカーに


今回のイクボスインタビューは、福岡・佐賀で「注文住宅のユニバーサルホーム」を展開する株式会社コスモスの取締役執行役員・渡辺年紹(としあき)さん。10年連続で、優良法人として税務署から表彰された同社は、創業から37年。一度も赤字を出すことなく、福岡4店舗、佐賀2店舗を構えるまでに成長しています。それには、女性の力が不可欠だったと渡辺さんは語ります。

成績がいい支店こそ、休みをしっかり取っている

―子育てなど、働き方に制約があるスタッフに配慮するようになったきっかけは何だったのでしょう。

渡辺:女性の採用が年々増えてきたことです。昔は、住宅業界で活躍する女性はいませんでした。時間が不規則だからか、採用しても1、2年で辞めてしまう人が多かった。しかし、住宅を作る上で女性目線は欠かせません。そこで、どんな人でも長く働ける環境を作らなければと思ったのです。

―具体的にはどのような対策を?

渡辺:まず、時短勤務、育児休暇を取りやすいようにしました。チームを作り、お客様には必ずペアで対応することで、どちらかが休んでも迷惑が掛からない体制を整えたのです。お互いをフォローできますし、ミスも減る。いいこと尽くめです。3回育休を取っているスタッフもいます。そのような先輩がいると、新入社員も安心しますね。

―改革は大変だったと思います。「あの人は時短だから」など、不満が出ませんでしたか?

渡辺:初めは苦労しました。ここ7、8年でしょうか、女性の力を大切にするようになって、劇的に社員の意識も変わりました。損得で動かない人材が育っています。助けたら助けられる、が基本です。

有休取得率も増えました。会社としては、普段から休みをきちんと取ってもらいたい。住宅業界は、朝早く夜遅いというイメージがありますが、それを払拭したいと思っています。

対策として、お客様のご自宅への訪問を極力なくし、モデルルームに来ていただくようにしています。実はほとんどのお客様が自宅に来てほしくないと思っています。小さなお子さんがいると、片付けも大変でしょう?
お客様用のキッズスペースを作っていますので、お子さんが来られたら社員が全力で遊び相手になるなど、こちらに足を運びやすい工夫もしています。

もし深夜作業になったり休日出勤をしたら、代休をちゃんと取るように指示しています。面白いことに、成績優秀な支店ほど、完全週休2日で残業も少ないですよ。

―それはどうしてですか?

渡辺:無駄がないのです。休日にリフレッシュできているから、仕事にも身が入る。見ていると、集中して作業を終わらせています。

遅い帰宅が続くと、それが当たり前になってしまいます。「終わらないから仕方ない」と思うような責任者はだめですね。以前、残業続きの支店があったので、「早く帰るように」とFAXを流しました。だらだら仕事していても、結局効率が悪いだけですから。今では、やむを得ないときだけ「すみません、残業してもいいですか?」と連絡が来ます。

会社が本気だ、と思うと社員もやる気を出します。サービス残業は、働いている本人が損をするだけです。1日8時間もあれば、大抵の仕事はできます。

トップダウンでは、人は動かない

―他に、意識改革として取り組んだことはありますか?

渡辺:経営指針書を社員全員に配っています。また、各支店の店長が店舗理念や方針を考え、自分たちで理想の店づくりをしています。あるとき、会社からの押し付けでは人は動かないことに気づき、それから社員の自主性に任せるようにしました。”やらされている”では、意味がない。自ら考えることで、会社と真剣に向き合ってくれます。

個人的には、面談時に「あの時、助けてくれた」「こんなことで頑張っていた」と具体例を出して評価しています。人は、感謝されるとうれしいですよね。人のために動く、人に喜んでもらうのが嬉しい―それが日本人の心ではないでしょうか。

仲間で喜びを分かち合える住宅メーカーが理想です。採用のときも、「住宅の仕事をしたい」「営業がやりたい」というより、「この先輩たちと一緒に働きたい!」と感じてくれた人を採用し始めたら、離職率が下がりました。

―イクボス10か条の「⑩隗より始めよ」は実践されていますか?

渡辺:ONとOFFをはっきりさせ、その姿を社員たちにも見せています。
趣味はいっぱいあります!温泉、ゴルフ、ソフトボール。ソフトボールは、地域のチームに20年以上所属していて、今は選手兼監督です。試合や練習の日は、仕事を絶対に入れません。

信頼され、みんなで助け合うから楽しく続けられる

―スタッフの原田さんに伺います。こちらで働いて何年目ですか?

原田:9年目です。女性ばかりの支店にいます。とても仲が良くて、皆で旅行に行くこともあります。

―ハウスメーカーでは、女性で長く続けられる人が少ないそうですね。原田さんは、なぜ9年も務められているのでしょう?

原田:とにかく楽しいですね。会社からの締め付けがありませんし、こちらを信頼して任せてくれるので動きやすいです。

他のハウスメーカーでは、営業、図面書き、見積もり、土地探しなど業務が細かく分かれていますが、私たちはすべて一人でこなします。とはいえ、それぞれ得意不得意があるので、支店内で助け合います。例えば、私は図面書きが早いので、土地探しで忙しい人がいたら「図面、私がやっておくよ!」と声を掛けてフォローします。常に何でも話し合っているので、お互いの状況もよく分かっているのです。その方が効率よく、お客様にも迷惑が掛かりません。

残業もほとんどしません。できるだけ、19時までに業務を終わらせるのが毎日の課題です。

―渡辺さんの存在は大きいですか?

原田:絶対的な安心感があります。営業で「どうしても契約を取りたい」というときに相談すると、「私が全責任を負うから行ってこい!」と背中を押してくれます。ホテルや大手の電機メーカーにも勤めましたが、今が一番働きやすいなと感じています。これからも、ずっとこちらで働きたいですね。

―ありがとうございました。
渡辺さん、最後に、これから社内改革に取り組もうという経営者にアドバイスをいただけますか。

渡辺:何事も”トライ&エラー”。まず始めることが大切です。エラーが出たら改善する、を繰り返して形にするのです。躊躇していては、このスピード社会に取り残されてしまいます。「できない」と言ってしまったら終わり。私も、”女性は続かない”と言われていたときから、10年かけて変えてきました。

社長自身も変化を感じていると思います。初めは相容れない部分ももちろんありましたが、不思議と考え方が似てきました。今は2人とも、社内に保育所を作るのが目標です。

—————

渡辺取締役、原田さん、ありがとうございました。

働きやすさが社員のやる気につながり、業績にも反映されているのでしょう。リーマンショックや消費税アップのときも、ほとんど影響を受けなかったといいます。
パートから社員になった女性が、営業TOPを走っている同社。今後も多様な働き方を認めながら、右肩上がりが続きそうです。


<企業情報>