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【第13回】米澤賢治さん(グーグル株式会社 人事部長)

[公開日] [最終更新日]2017/02/20


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今回のインタビューでは、グーグル株式会社 人事部長の米澤賢治さんが登場。入社2年目の時に家族の看護休暇を導入したり、実践的なマネージャー研修を行い、社内のイクボス養成に努めていらっしゃいます。

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DSC_4541 <米澤賢治さんプロフィール>
44歳。アクセンチュア株式会社で経営コンサルティング、組織・人事関連コンサルティングに従事。その後、GE Money 人事クライアントマネージャー、日本GE プロジェクトリーダー、HSBC 人事ビジネスパートナーを経て、2011年グーグル株式会社人事部長に就任。現在に至る。3歳男の子のパパ。

日々夕食を一緒にとっていた、父の姿がお手本

安藤:グーグルに勤める前は、どんな働き方だったんですか?

米澤:まだ若かった頃は100%仕事中心の生活でした。でも、子どもが生まれたら仕事とプライベートのバランスをとりたいと、ずっと思っていました。

安藤:それはなぜですか?

米澤:子どもの頃、父親が夜7時半には家にいて、夕食は家族みんな(父母、兄、私、妹)で食べるのが当たり前の生活をしていました。そのころ父親は滋賀から大阪の会社へ通勤していましたから、朝5時半に起きて6時に家を出る生活。早く帰るために、朝早く行っていたんでしょうね。そういう父の働き方を見ていたからだと思います。

安藤:親の姿を見て子どもも同じようにするんですよね。米澤さんも早く家に帰って家族で食事しているんですね?ママの不満の多くは、子育てよりも、夫への不満ですから。

米澤:はい、出来るだけそうしています。妻にはまだタイムマネジメントに関して満足してもらえるレベルには至っていないようですが(笑)。

33歳で妻と結婚し、7年間は二人でよく旅行しました(笑)。子どもがいると夫婦で遊べないとか、好きなことができないとか聞きますが、今は子どもに時間を割くのは当たり前だと思っています。子どもができる前に遊びきったからですかね。結婚した直後でも、相変わらず平日は仕事中心の生活でしたが、徐々に平日でも仕事とプライベートのバランスがとれるようになってきました。

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会社の考え方の基本が、家族重視

安藤:年収を伸ばそうとすると、どうしてもハードワークになりますね。グーグルに転職されてからはいかがですか。
米澤:グーグルは働き方として決してラクというわけではありませんが、会社の考え方の基本が、家族重視なんです。たとえば子どもが熱を出したら、ママでもパパでも「早く帰れ!」が当たり前です。もちろん結果は求められますが。家に帰って、子どもが眠ってからPCを立ち上げたり……ということもあります。自分自身でタイムマネジメントできるのはいいですね。

安藤:最初から人事のポジションだったんですか?

米澤:いえ、最初のキャリアは、他社から請け負って人事部に対するコンサルティングをしていたので、結果が出るところまで見届けられないジレンマがありました。今は人事部におり、自分が仕掛けた仕事の結果が見えますから、そういう意味では非常に満足しています。

人事部で働き始めてからは特に「人として何を重視すべきか」を軸として考えながら仕事をしています。基本的には人事部のメンバーともそのように話して行動しています。たとえばご存知の通り、「子の看護休暇」は法律で定められていますが、奥様が入院された社員がいたんですが、当時は家族が病気になった際の看護休暇がなかった。「子どもだけじゃなく、家族が病気になったときにも使える看護休暇があるべきじゃないか。」ということで、その数カ月後には、家族の看護休暇を取り入れました。休暇制度を取り入れても、社員のパフォーマンスは下がらないんですよ。

安藤:そうなんですよね。WLBの制度と風土が整ってむしろ普通は「会社に報いよう」と、パフォーマンスが上がりますよね。社員が仕事と生活を両立しやすいようにボスが環境を整えれば社員は安心して働ける。それで会社に恩返ししようとがんばるっていうところが大事なんです。グーグルは家族の看護休暇をすぐに取り入れ、スピード感を持って改革できるのはいいですね。ダイバーシティビジネスパートナーの山地由里さんは、米澤さんの部署のメンバーですか?

山地:私はダイバーシティの社内コンサルタント的な役割をしています。上司部下という関係性ではありませんが、頼れる存在です。

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個々に関わらず、この人と働きたいという人を採用

米澤:グーグルでの子育てのしやすさというのは、採用の部分に関係があると思います。インタビュアー全員が「この人と働きたい」と言わないとご入社頂けないんですよ。そういう意味では、採用の基準はある意味高いと言えると思います。ただ、ご入社頂いた後には、その高い採用基準を超えて入社された訳ですからマネージャーも信頼を置けます。本人は力むことなく、自分にとっての顧客にフォーカスすればいいということになります。

安藤:採用された人は、採用時点で既に会社からあるいはマネージャーから信頼されているということですね。

米澤:信頼されているから、その人らしさを出して働けるということです。

山地:結婚している、子どもがいるということは関係ありません。独身であるからといって、働き方や時間に制限がないとも限りません。つまり誰もが様々な背景がありながら仕事をしているという考え方です。グーグルの場合は、「このポジションが長い間あいているから、ポジションがなくなる前に少し妥協をして誰か採用しなくちゃ」という考え方もないんですよ。

米澤:長いことあいたままのポジションもありますよ。あいているポジションは、本社からローテーションで入ったり、派遣社員さんが入ったり、時にはその部署のメンバーがその方の分までカバーせざるを得ない状況になると言うこともありますが。

2回目の応募は締め切りましたが、Google gCareer Programというプログラムがあります。職場やキャリアから6カ月以上離れていて、就労経験(5年以上)があるプロフェッショナルを対象とした性別・年齢・国政を問わないインターンシップ プログラムです。
https://www.google.co.jp/about/
careers/lifeatgoogle/gcareer.html


日本の場合は、出産後仕事に戻れない女性も多くいますから、ぜひ、キャリアを再スタートする一歩目にしていただけたらと考えています。もちろん、グーグルで働いてみて、やっぱりご家族との時間を大切にしたいので今は家族を重視したいとか、仕事はしたいけどグーグルじゃないという方もいます。

山地:子育てと両立できないから辞める、仕事を続けることで自分や誰かにしわ寄せが行くということなく、誰でもがキャリアを続けられる、あるいはやむを得ず辞めることになっても、自分自身の機が熟したときには、キャリアを再スタートすることが簡単にできる社会になるといいと思います。

安藤:キャリアのリスタート。企業がいろいろな働き方の受け皿を作り、応援できるといいですね。

山地:企業のサポートもそうですが、働く側の意識改革も必要です。特に子育てに関しては、「家族サービス」「子育てを手伝う」なんて言葉を聞きますが、どちらかが「手伝う」のではなく、それは二人の仕事でしょうと言いたいです。男性にも当事者意識が必要ですし、女性も自分一人で抱えないという意識が大事だと思います。

安藤:イクメンも量から質へと転換していかなくてはいけません。でも女性自身が、パートナーに、なぜ働きたいかを伝えられない人も多いですね。

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山地:子育てなどが一段落ついてから働こうとすると、5~10年キャリアから離れてしまう人もいます。でも、そうすると本来能力の高い人であっても仕事に対するスピード感や能力が色あせてしまう場合もある。それはその人にとっても、日本にとっても大きな損失だと思います。

安藤:子育てとキャリアの狭間で揺れるママは多いですね。でも今後は育児する男性が増えるのでパパも同じこと。子どもが10歳くらいになると、親は遊んでもらえなくなりますから、それまでちゃんとコミットしておくことが大切ですね。

米澤:妻は15歳のとき、アメリカ留学したんですよ。だから夫婦の認識として、もしかしたら15歳までしか子どもと一緒にいられないかもと思ってます。子どもはもうすぐ4歳なので、あと11年をどう楽しむかというのが家族の大事なテーマ。グーグルに転職したおかげで、子どもが初めて立った瞬間を見ることができました。

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安藤:ハイ、子育ては期間限定ですからね。肌を寄せ合うスキンシップの時期は本当に短い。夕飯を一緒にとる父親としての存在感はとても大事だと思う。子どもの頃からの関わりは、思春期へとつながっている。それに夫婦のパートナーシップにも大きな影響がありますね。

米澤:子どもが15歳になったときに、例えば「お父さん、僕、アメリカに行きたいんだけど」と言われたら、どういった言葉をかけてあげられるかなと今から想像したりしています。

安藤:わが家の場合は、子どもが「○○が欲しい」と言うと、3日間考えさせて、それでも欲しい場合は、プレゼンさせています。子育ての本当のゴールは、子どもを社会に出すこと。子どもの自立を応援できる「家庭内イクボス」を目指していきたいなと。

<イラスト:東京新聞>

グーグル的マネージャーの8つの行動指針

安藤:イクボス10カ条はいかがですか?

米澤:いい内容だと思います。2012年からマネージャーのマインドセットをどう変えるかをテーマに動いています。グーグルカルチャーをを組織に浸透させる際には、マネージャーの意識改革はとても重要です。特に日本企業から来た人は、グーグルのマネージャーとしての考え方がわからない場合も多いので、ケーススタディのディスカッション形式にして、「理解→咀嚼→行動→リード」というトレーニング方法を取っています。起こりそうなトピックを選択し、マネージャーとしてどう振る舞うべきかというトレーニングを、1年~1年半かけてやってきました。

安藤:FJのイクボスPJで伝えているところと同じですね。妊娠した女性スタッフに向かって「まいったな~」と、つい言ってしまう上司がまだまだいますから。

米澤:マネージャーとして、概念や知識は入っているんです。ただケーススタディ等で間接的にでも経験していないと、その場面での適切な対応が難しい。社内の従業員満足度を測っていますが、目に見えるようにスコアがあがってきています。マネージャーへの研修は浸透してきていると言えるでしょう。

また、マネージャーとしての8つの属性が、以下のように定義されています。

1、優れたコーチである
2、チームを力づけ、こと細かく管理しない
3、チーム・メンバーの仕事上の成功と私的な幸福に関心を示し、心を配る
4、建設的で、結果を重視する
5、コミュニケーション能力が高く、人から情報を得るし、また情報を人に伝える
6、キャリア開発を支援する
7、チームのために明確なビジョンと戦略を持つ
8、チームに的確な助言をするために、主要な専門的スキルを持ち合わせている


安藤:グーグルではダイバーシティをどのように考えていますか?

米澤:トップマネジメントは”ダイバーシティこそ未来です。”というメッセージを従業員に送っています。ダイバーシティがあるから、イノベーションが生まれるといった発想です。最も分かりやすく言えば「みんな違って、みんないい」という考え方です。国籍、性別、性的志向、障がいの有無、働き方等だけではなく、キャリアバックグラウンドのダイバーシティも大切です。

安藤:世のイクボスやこれからイクボスを目指す人、そしてご家族にメッセージをお願いします。

米澤:リーダーはみんなに影響を与える存在であるべきだと思います。仕事はもちろん、プライベート、家族との過ごし方、貴重な時間の使い方をボスがメンバーに伝えていって欲しいですね。ライフイベントを大切にしながら、色々な気づきを管理職がメンバーに伝え示していく。それが人生を豊かにするし、仕事の内容を良くしたり、新しい発想にもつながっていくと思います。妻には常に感謝しています。これからも子どもにフォーカスして、2人で愛情を注いで育てていきたいと思っています。

安藤:今日はありがとうございました!

インタビュー:安藤哲也(ファザーリング・ジャパン代表)
(筆:高祖常子)
2014年11月25日「イクボスロールモデルインタビュー」より転載)