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【第28回】荒牧菜苗さん(株式会社アラマキ 常務取締役)

[公開日] [最終更新日]2017/04/22


イクボス・ロールモデルインタビュー第28回は、株式会社アラマキ 常務取締役 荒牧菜苗さんが登場。

アラマキでは、使い方自由で1時間単位で取得することができる有給休暇制度を整備。看護・介護休暇も1時間単位での取得が可能。男性社員向けの特別育児休暇制度を設けており5日間の有給休暇制度を義務付けている。会社の風土やご自身の考え方について伺った。

<荒牧菜苗さんプロフィール>
2002年入社。機械・工具の総合商社アラマキで、営業・事務の他、新卒採用を担当する。三代目の跡継ぎとして、 現在は常務取締役を務める。

就職活動に疲れて、父の会社に入社

荒牧:1951年に祖父が立ち上げた会社です。現在は父が社長です。
私自身、就職活動に疲れた(笑)というのがきっかけです。何社か受けた就職活動の面接で「あなた自身を動物に例えたら?」なんて質問をされて、イヤになりました。もともと父が仕事を頑張っている様子を見ていて、跡継ぎになろうとは決めていました。それに、世の中は何かとがんじがらめで働きにくそうな会社ばかり。父の会社は自由そうでしたし、いずれ私が社長になれば、もっと自分の願うように組織や働き方をデザインしていかれるというのも魅力でした。

安藤:会社の規模や社員の年齢は?

荒牧:社員は60名。従業員は67歳~22歳までで、平均年齢は42歳です。子育て中の人もいれば、親の介護があったり、病気や障がいのある家族がいたりなど、家族の背景はさまざまです。
父が20年前に1日6~7時間勤務の短時間社員制度を作りました。福利厚生などは、社員と同様の待遇です。この制度導入によって、女性もかなり働きやすくなったようです。現在は男女含む10名以上の従業員が、この働き方を利用しています。

安藤:業績はいかがですか?

荒牧:業績は横ばいか、前年度よりもいいですね。

自分の体験も活かしつつ、制度を見直していく

安藤:荒牧さんのお仕事内容は?

荒牧:採用と働きやすい環境作りが主な仕事です。入ったときから常務でしたが、父からは「常務というあだ名だと思いなさい」と言われています。

今、自分が妊娠中ということもあって、妊婦向けの制度を作りたいと思っています。妊娠しても、安定期にならないとなかなか会社に伝えてくれない。でも、安定期になる前の時期の方がつわりとかで大変ですから。妊娠がわかったらすぐに短時間勤務に切り替えることができたり、本人希望があれば配置転換できるなど。妊娠したことを早く伝えてくれた方が、本人も職場も安心ですから。早く伝えたらインセンティブを出すなどの制度もいいかなと思います。

安藤:産前産後の時期、大事ですね。妊活支援の制度はありますか?

荒牧:妊活というとなかなか利用しにくいので、治療休暇というのを設ける予定です。あとは、今、イクボス就業規則集を見ながらいろいろ書き換えを行っているところです。

安藤:妊活支援制度を使う人はいそうですか?

荒牧:子どもを授かりたい社員は男女問わず使ってほしいです。ただ、妊娠に限らず、病気をする人もいますからね。いろいろな人が使いやすい制度設計を考えたいと思います。

安藤:採用はどんな感じですか?採用基準は?

荒牧:新卒と中途を両方採用しています。採用基準は素の自分を出してくれる人です。

安藤:ご自身が女性ということで、差別を受けた印象を持ったことはありますか?

荒牧:差別ということではありませんが。20代のときは営業だったので、クライアントはほとんど男性でしたから、気を遣わせているという感じはしました。あとは、大きな車(ステップワゴンなど)を運転していると「すごいね~」なんて言われましたね。
あとは、女性だからという理由で話をわかってもらえないこともあります。
いまだに電話で「話が分かる男の人に代わって!」って言われることもあります(苦笑)。

安藤:僕も保健所から4カ月検診の電話があったときに「お母さんはいませんか?」って言われたことがあった。「妻は仕事でいません。父親じゃダメなんですか!?」って言いましたけど(笑)。さて、ワークライフバランスについては、いかがですか?

荒牧:昔から父は「長時間労働は能率が悪い」という考え方だったんです。

安藤:身近にお父さんというロールモデルがあって、よかったですね。

荒牧:幼い頃に、母と父が大げんかしたことがあったんです。それで母が姉に、「私とお父さんのどっちについていく?」と聞いたことがありました。そのとき姉は「父についていく」と言ったんです。理由は「お金がある方が、人生の選択肢が増える」ということでした。母は専業主婦でしたから。そんなやりとりを聞いて、幼いながら、お金を稼いだ方がやりたいことができる。そのためにも自分は一生働いていきたい!と思っていました。

社員同士がチームでフォローし合う風土

安藤:産後の仕事復帰へのプランはありますか?

荒牧:産後は4~5カ月になったら保育園に入れたいと思っています。実母は、孫の世話をしてくれようと思っているみたいですが、母にも自分の人生がありますから。夫にも育休を取ってもらって乗り切りたいと思っています。

安藤:ご自身が産休・育休に入ることで会社業務への心配はないですか?

荒牧:社員も休みは自由に取得してもらっていますが、基本的にチームでフォローしあっています。会社側は自由放任。社員同士でうまく調整してくれています。会社は考え方を示せばいいと思うんです。あとは社員が工夫して行う。病気療養中、育児中、介護中、いろいろな社員がいます。それぞれが当たり前に会社にいていいという感じです。もちろん独身の人も連休を取ったりすることもありますし。

安藤:制約がある社員がいる場合、独身の社員に業務が偏って不平不満が溜まり、悩んでいるイクボスが少なくないです。その点、60人くらいの会社規模だと、全体の業務が見えやすいということもあるのでしょうね。

荒牧:うちの会社は、中間管理職がいないんです。だからなのか、社員同士とても仲がいいですし、お互い様で助け合う風土があります。

安藤:個人の評価はどのように決めていますか?

荒牧:社長の父が、営業の場合は売り上げから決めています。事務職の場合は貢献度での評価です。

安藤:社員の定着はどうですか?

荒牧:久しぶりに昨年1人離職しましたが、「他の仕事もしてみたい」というのが理由でした。戻って来たくなったら、戻って来ていいと伝えています。
他の社員もそうですが、みんな素晴らしい能力と可能性があります。どんな人生を過ごしていきたいか?という本心は自分自身が持っているはず。会社は社員の人生を縛る場所ではなく、楽しい人生を過ごすために必要な場であり続けたいです。

安藤:部下から荒牧さんがもらった言葉などありますか?

荒牧:毎週月曜日の朝に、朝礼メールを送っています。それに対して、共感してくれることも多いです。先日送ったのは「私は今週で妊娠5カ月になって安定期に入ります。仕事はあと2カ月後くらいに割り振るので、協力をお願いします。自分自身も、妊娠や出産に向けてままならないと感じることがあり、新たな制度が必要だと気がつきました。誰もが病気や介護・育児などで長期休職が必要なときがあって当然で、スーパーマンなんていない。みんなでまわりの人を応援しよう!という風土を社内だけでなく、世の中に広げていきたいですね。」というような内容。
そのメールに対して、社員から「私の子どもの会社にもこんなメールをくれる上司がいてほしい」なんて感想をもらい、嬉しかったですね。自分の思いを社員に伝えて、モチベーションをあげてもらうことも大事だと思っています。

安藤:これを読んでいるみなさんにメッセージをお願いします。

荒牧:社員は、そのままでいいということです。父の理想は「何も考えないで来られる会社」。日曜日になると「明日からまた会社が始まる。いやだな~」なんてことありますよね。会社に来ること、会社にいることが、自然なことで、社員が明るくのびのびと仕事をしてくれたらと思っています。ありのままの自分でいられる。それがその人の能力を一番発揮できる環境ではないでしょうか。

安藤:研修などはありますか?

荒牧:年3~4回、講師を呼んでキャリアビジョンの講座を行なっています。あとは、コミュニケーションを大切にしています。社員のみなさん同士も、同僚、仲間の話を聞いてお互いの力を引き出してほしいですね。管理や監視でなく、性善説。やりたいこと、本音、本心を引き出してやらせてあげられる、力を発揮できる環境が大事だと思います。

安藤:子育てについてのビジョンはいかがですか?

荒牧:まず、子どもには「私たち夫婦を親に選んでくれてありがとう」と伝えたいです。1年間の不妊治療の後、命を授かりました。治療は辛かったですが、命の奇跡や人生にはままならないこともある、と学べて感謝しています。その気持ちを忘れず、親のエゴをぶつけず、夫婦で協力して子育てを楽しんでいきたいですね。

安藤:僕も3児の子育てしましたが、部下を育てるって子育てと同じだと思うんですよ。「部下のために」って何でも指導的になりすぎると裏目に出ることもあります。パパの方が教育熱心になりすぎることもありますね。子育てでは、父親と母親の考え方が違うのもOKと思っています。どっちがいいかと葛藤することも必要。夫婦で子育てについてたくさん話した方がいいですね。

荒牧:ペットが亡くなった時に、とても落ち込んだことがあって。ペットじゃなくても、親友や大好きなアーティストが亡くなって落ち込むこともあるじゃないですか。「そういうときに気持ちを整理する時間が必要だから、そんなときは休みをとりましょう」と朝礼メールで社員に伝えたこともあります。

安藤:自分の体験を元にしてメッセージしてくれる上司は社員も安心しますね。上司だからいつも強くなくてもいいしね。負けるが勝ちということもありますから。今日は貴重なお話をありがとうございました!

(筆:高祖 常子)


投稿者:川添 祐樹
投稿者:川添 祐樹
イクボスドットコム編集長
NPO法人ファザーリング・ジャパン会員